聞き間違いじゃなければ…
幸樹は自分の脳をフル回転させ、昔の女の子がリーナという事、そして騎士になるという約束をしていたことを思い出し、この件はひとまず一件落着…のはずだったのだが、本当の事件はここからだった。
「エルミアナさんとりあえず約束とか思い出したんだけど…」
「私の事は特別に『リーナ』と呼ばせてあげる」
「あ、うん。騎士になる約束は思い出したんだけど…結局のところ何をどうすればいいの?」
「そんなの簡単よ! 私を守るそれだけ。幸樹のミジンコ並の脳でもそれくらいわかるでしょ」
「いや、さすがにミジンコは言い過ぎだって」
リーナは、幸樹が約束と小さい頃の自分を思い出してくれたことに、口調は砕けた感じになっていた。
また、リーナは、幸樹が一時的に約束を忘れていたことは、今回だけ見逃してあげるという事で、幸樹はなんとか許してもらえたが、幸樹が約束を破り、リーナからとてつもないお仕置きを受けるのは別の話。
「さてと幸樹」
「?」
「貴方はまだ剣術使えるのかしら?」
というリーナからの質問に幸樹はすごく答え辛そうな表情を浮かべたが精一杯の作り笑いを浮かべ答えた。
「うん。使えるよ」
リーナは幸樹のその表情と今まで見たことのない作り笑いから何かあったのだろうと予測した。
「幸樹…話すだけでも楽になるかもしれないわよ」
幸樹はその言葉を受け、話してみようと口を開けたのだが、何か思うところがあったのか首を振りリーナに告げた。
「こればかりはどうしようも無いな…自分で…解決しないといけない問題でもあるから…」
という言葉を発する幸樹…リーナはその言葉を受け、今までの幸樹からは考えられない何かを感じ取った。
その場に暫しの静寂が訪れた。その静寂を破ったのはリーナだった。
「ちなみに幸樹、私の国では2つの意味の騎士があるわ」
「ということは、俺はどっちの意味の騎士?」
「幸樹の騎士の意味は…国についてから教えてあげる」
リーナの言った言葉を聞いた耳を疑った。
「聞き間違いじゃなければ…今、国って言った?」
「もちろん」
淡々と幸樹の問いかけに返事をするリーナ
「今の言い方だと今からリーナの国に行くっていう感じだったよな?」
「感じじゃないわ。今から行くのよ。私の出身国の『エルミアナ』へ!!」
「はぁぁぁぁぁあ!!!!」
再び幸樹の叫び声が学園中に響いたのであった。