魔王のお仕事
誠に突拍子もなく、誠に突然だが吾輩は魔王である。
名前はマオである。
魔王でマオとは誠に短絡であるが、吾輩の両親もまさか吾輩が魔王になるとは思っていなかったであろう。
いや、本当に何で吾輩は魔王何てやっているのだろうか?
兎にも角にも吾輩は魔王となった。
ところで諸君、魔王といったらどんなイメージを持つであろうか?
勇者と呼ばれる人間と戦う悪の大王のようなイメージ?
魔物大群を率いて人間の領地を攻め込む悪の将軍のようなイメージ?
答えはノーである。
王と言うからには治める土地があり、人民がいる。
人がいれば争いが起きるが、それを治めるための法が必要になる。
好き勝手やっては土地など治まらないのだJK。
なので魔王である吾輩が沢山の書類に囲まれているのは全く持っておかしくないのだー。
ははは・・・
さてさて今のしゃべり方で聡明な方々ならお判りいただけるだろうが、吾輩は俗に言う転生者と呼ばれる人間である。
もとは一般人でアニメやら漫画を好むオタクという人種であった。
知識チートなんてネットがなければわからんし、神様からチート能力が与えられたわけでもない。
武術なんてこれっぽちも触っていない。
死んだ原因も過労死とか誰かを助けて死んだ訳でもなく風邪をこじらせて死んでしまったのを覚えている。
本当のただの一般人だったのです。
そんな吾輩はいまとってもピンチです。
「魔王だな!今こそお前を斬る!!」
勇者と呼ばれる人間に絶賛襲われ中です。
吾輩は魔王と呼ばれるからには人間と違う種族である。
魔人族と呼ばれる種族で人間と姿容姿は全く変わらない。
ただ魔力がとても強いがそれだけ、小さい頃は何が違うかと頭を悩ませたものだが、自分の中では人種の差だと勝手に納得している。
「え、なんで?」
書類が山のように積まれた部屋に飛び込んできた若き勇者に語り掛ける。
入ってきた勇者に剣を突き付けられたまま書類に目を通す。
「貴様達魔族が俺の村を襲ったのだろう!!ここで両親と村の人の仇を討つ!!」
「村?いや、吾輩はつい半年前に即位したばかりだけどそんなことしてないし」
「は?」
「え?」
お互い顔を見合わせる。
「とりあえず・・・お座りください」
吾輩は勇者くんにソファーへ座るよう促す。
勇者くんは怪訝な顔をしながら腰を掛ける。
「えーと、魔王のマオです。魔人族です」
「勇者のギザ」
挨拶をちゃんと返してくれる勇者ギザくんはまじ紳士。
「あれ、ギザくんそう言えば一人で来たの?」
「いや、仲間が・・・」
あ、大広間から爆発音が・・・
「とりあえず止めに行こう」
広間の修繕費の計算をしながら吾輩達は大広間に向かった。
仕事が増えてとてもつらい・・・