私の相棒はスクールバック
私は今、ものすごくイライラしている。
友達とうまくいってないわけじゃない。勉強も、わからないところはあるけどなんとかついていけてる。…と、思う。
じゃあ何にイラついているのかというと、原因は昔から、そして今後も多分変わらない。
「美咲、みーさーきっ!ああ、今日も可愛いね!愛してるよ!」
これだ。
毎日毎日、私につきまとうこの男は可愛いだの何だのと言っては綿あめよりも軽い愛を告白してくる。周囲の目を見て、死んだ魚みたいになってるから。
一応言っておくと、私は断じて可愛いなんて分類される容姿はしていない。見事なまでの平凡顔だ。
ちなみにストーカー()男は、ぱっと見だけはイケメンだ。腹がたつ爆ぜろ。
どんなに頭の中がお花畑だろうと、イケメンにはイケメン補正なるものがかかるのが世の常というもの。その例に漏れず、このストーカーはイケメンという免罪符によって周囲からは生暖かい目で見守られている。
え?私?私はほら、平々凡々などこにでもいるレベルですから?
補正かかるどころか「なんでこいつ?」と疑惑に満ちた目で見られてますよ。理不尽!
「あーもう!こっち見るな、っていうか近づくな!なんなのあんた!毎日毎日毎日!」
「あ、やっとこっち見てくれたね!怒ってる美咲も可愛いなぁ」
にこにこ笑顔に周囲から黄色い歓声が上がる。こっち見てーとか叫んでるオバサマもいる。ぜひそうして差し上げろと言いたい。
「なんで毎日つきまとうの」
「つきまとってなんか!ただ少しでも、俺の気持ちを知ってもらいたくて、一緒の帰り道歩いてるだけだよ!」
………などと供述しており。
いやこれ、もうアウトじゃない?アウトだよね?自分からストーカーしてますって言ったも同然だよね?
「………ストーカー被害って、とりあえず警察でよかったっけ?」
「ええっ、美咲、ストーカーに遭ってるの!?辛かったよね、これからは俺が守るから!」
「あんたのことだよ、ストーカー!!」
フルスイングしたスクールバックは見事鳩尾を抉り、標的を打ち倒した。さすがだぜ、相棒。
お題:イケメン、スクールバック、ストーカー




