the white
カレは眼を開けた。眼前には紅が広がっている。
「お気に召しませんでしたか。」
横の女が申し訳なさそうに言う。
カレの口が開いた。
「何だ今の夢」
疑問を抱きながら藤巻陵は目覚めた。
身体を起こすと体の節々に痛みが走った、そういえば昨日はクラスメイトとどっか行ったな。そんなことを思い出しながら昨晩用意していた弁当に手を出した。
「いただきます」
彼はいつものように儀式を終え朝食を食べた。そういつものように。そして彼は朝食を食べ終えた。そういつものように。箸を洗うときに使うスポンジも洗剤も同じ。こっそり残す漬物も同じ。いつものように学校に行く。彼は家のドアを開けた。
しかし、ドアの先にいつもの風景は無かった。
眼前には花畑が広がっていた。色はただ白、というか白しか無かった。他の色はというと自分が着ている高校の制服の黒しかない。それにとても風が強く寒い。
彼は事態が把握できずただ漠然と立ち尽くしていた。
すると後ろから音が聞こえた。軽い木材を落としたような音が。彼は素早く振り返って周りを見渡した。一本だけある大きな蓮の花の前にそれはいた。右手には鉈のようなモノが握られている。
「美しい華だな」
それは言った