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終末と写真と丘の上の館  作者: あおまめ
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ガーゴイル部隊

 ヨルムは味なのしない朝食を、どうにかして胃に流し込む作業を終え食後の一杯にとコーヒーを飲んでいた。その横で血観博士も、コーヒーをすする。

 血観博士は、傍から見れば肌がやけに白い、お姉さんといった見た目だ。ただ、よく内臓を出していたり、体のパーツのどこかが腐り落ちていたりと、彼女をよく知る人からすれば、見た目が非常にグロテスクなのだ。誰も食事を一緒にしたいとは思わない。

 そんな血観博士とヨルムは、コーヒーを飲みながら雑談中だった。

「この前の銃、あれ威力強すぎ。危うくこっちも丸焦げになるところだったし、てかお気に入りの風景が一つおじゃんになっちゃったんだよ」

「ああ、それは済まない事をした。あれは試作品の実験途中のものでね。兵器に魔法の組み込むのは、考えているより難しくてね。構想は思い浮かんでいるんだが、実際にやってみるとだいぶ違うものだよ。まぁ、そういったものの積み重ねだから、今後も実験に付き合ってくれ」

「まぁ、いいけど。あなたのおかげで、切り抜けたピンチもあったしね。後、これ。この前行って来た場所で採取した物よ、大切に使ってね」

 ヨルムは、そう言うとどこからともなく試験管を取り出し、血観博士に手渡す。

「これが、青い場所で取れた物か。ありがとう、研究に生かしていくよ。ところで、襲われたと聞いていたがよく採取できたね」

「採取した後に襲われたの。ほんと頭に来る、フィルムも無駄にしたし」

「ふふふ、いつもの悪い癖が出たようだね。あまり凝りすぎるのも良くはないよ。じゃあね、また地下に潜るとするかな」

 血観博士は席を立ち、そのまま去って行った。ころと何かを落としたような気がしたが、ヨルムはそれを無視する。きっと誰かが片づけてくれるだろうと。

 そして、ヨルムも出かける為に準備をしようと食堂を出る。

「ヨルム様、どちらに行かれるのですか?」

 さっきまで黙っていた、ミーリアが喋り出す。いや、喋り出したらうざいので食事前にヨルムが黙るように言い包めていたのだが、食事が終わった時点で終わったと思ったミーリアは自由に動くのだ。ヨルムにとって永遠に止まっていて欲しいのだが。

「ちょっと外に」

 そっけなく返すヨルムに、ミーリアは喰い付く。

「では、私も一緒に・・・・・・」

「ダメ!」

 ミーリアを外に出すことは出来ない。どんな危険なことをしでかすか分からないから、ヨルムは一度足りとその許可を出したことはない。

「いつも通り、一人で行く」

 そう言って部屋に戻る。

「意地悪です」

 そんな言葉が聞こえるが、ヨルムは無視する。誰も歩く爆弾と一緒になんか居たくないだろう。

 ヨルムが部屋に戻ると、トレースとトリアが掃除をしていた。

「お食事はいかがでしたか?」

「最悪だった」

「ミーリアですね。それは災難でしたね」

 トリアが呟き、この話が終わる。ヨルムはそのまま外にでる準備をする。豪華な部屋の隅に、まとめるようにして置かれた、リュックや装備などを手に取り付けていく。

「今日もですか?」

「ああ、今日は少し遠くの方まで行こうと思っている。この辺りは、だいたい見て終わったからな。本当は野宿しながら、いろいろ見ていきたいけど流石にダメだろうなと思っている」

 外は本当に危険のところであるため、ヨルムを外に出したくないといったのが屋敷に居る者たちの意見なのだが、この屋敷のトップがヨルムであるため、そう強く言えない。それをヨルムも理解しているからこそ、ヨルム自身もあまり無理をする事は出来ないと感じている。

 いつものローブ姿に、メガネ、そしてローブの下には様々な装備と古いカメラを携え準備を完了する。その手慣れた姿からは屋敷のお嬢様などといった雰囲気はなく、戦場へ向かう兵士の様であった。

「「いってらっしゃいませ」」

 ヨルムを二人のメイドが見送る。

「いってくる」

 そう言って、着替えを終えたヨルムは部屋を出た。そして、そのまま屋敷居を出ようとするヨルムに声がかかる。

「待ちたまえ、この新作を持って行くがいい」

 どこから湧いて出て来たのか、血観博士がヨルムに何かを投げる。

「これは?」

「うむ、それはただの小刀だ。時代が時代ならサバイバルナイフとかいうヤツだろう。とは言っても私の特注品だ。そんじょそこらのナイフと一緒にしてもらっては困る。まぁなんだ、よく切れる便利な道具だと思って使ってくれ。使っていればそのうち分かるさ」

「そのうちじゃ、実戦で役に立たないかも。でも、ありがとう。あまり気乗りはしないけど使ってみる事にする。爆発しないのであれば、きっと重宝すると思う」

「そこは、保証しよう。斬ること、意外にそれは役に立たない。この前の銃のような威力も出ないと」

 それを聞いて少し安心したヨルムは、そのナイフを懐にしまう。そして、今度こそ誰にも止められることなく屋敷を出た。




 ヨルムの住む屋敷は、丘の上にある。そして、屋敷の周りを広大な土地があり、それらを囲うようにして柵がある。その柵は物理的にも魔術的な観点からも、外部との接触を断っている。その柵の内側は、地球が変わる前環境に魔術的に設定されているため、今でも屋敷の広大な土地には、鶏や豚といった家畜や様々な野菜が育てられている。

 そして、その柵を守るための者たちが各場所に配置されている。ファンタジーと化した外の世界には、この屋敷を脅かす存在も多数いる。そんなモンスターたちを駆逐する部隊が各方角に分かれてこの柵を守っているのだ。

 ヨルムが、門まで歩いていると上空からそれは降って来た。

「おはようございます、ヨルム様。今日もお出かけですか?あまり、無茶はしないでくださいね。私たちは柵を守るためだけの存在、外に出たヨルム様を守る事は出来ませんので」

「おはよう、グリム。相変わらずうざい胸をしている」

 降って来たそれは、桜色を髪をした胸の大きな女性であった。その女性は黒の軍服を身に纏い、背中には羽を生やしている。そして、どこか妖艶な雰囲気を出している。

「ところで、グリム。こんなところに居ていいの?北を守る部隊長であるあなたが、こんな所で油売っててさ」

「ええ、その辺はぬかりありませんわ。今の作業は、この前のドラゴン掃討戦で出た死体の後始末ですから、下っ端でも十分にその役を果たせるでしょう。そして、今の所こちらに向かって来る魔物の気配もありませんので、わたくしはフリーですわ」

「随分と自由なガーゴイルもいるもんだね。ガーゴイルは、役目がない時は石になっているものだと思っていたけど」

「そういった下っ端もいますよ。私はその下っ端より行動範囲が広いだけで、基本的に守護する場所から離れる事は出来ませんから」

 ヨルムは、柵や門を守るガーゴイル達を思い出し軽く舌打ちする。この屋敷を作った男の趣味全快の軍服を着たガーゴイル達を。屋敷のメイドよりも、彼の趣味が色濃く反映されているのがガーゴイル達だ。ヨルムが持って無いものをこれでもかと強調させたボディに、大人っぽい性格とか思い出すだけでも吐き気がする。

「とにかく、今日も外に出るから門通るよ。それと、東から出ていくつもりだからグリムのいる北門は今日は通らない」

「そうですか、残念です。では、私も一緒に東門に行きますか」

「え、なんで東はタロスがいるじゃんか」

「暇ですので」

 自分勝手すぎるとヨルムは思う。ガーゴイルだけではない、基本的にこの屋敷に仕える者たちは自由奔放に行動している。これもあの男が定めたものだったけ、と思い出しながらため息をつく。

 歩いていると様々な物が目に付く。辺りの草を食べる牛や、少し奥には実を付けた稲穂があったりと世界が滅びた今ここはノアの箱舟といったところだろう。そんな事を考えながら、歩いていると東門が見えて来た。

 門がある場所で、こちらに手を振る人影がいる。低身長ではあるが、その者も黒の軍服着ていて背中から羽が生えている。

「タロスのヤツ、嬉しそうじゃない」

 ヨルムの一歩後ろを歩くグリムが、少し不機嫌になる。

 ヨルムは口には出さないが、東門のタロスとは仲が良い。良く東門を抜けて外に出ているためて事もあるが、タロスは他と比べヨルムと似ているからだ、特に体が。ヨルムが勝手に同士だと思っていたりして、基本的に他の者たちより距離が近い。タロスが着やせしていることに、ヨルムは気づいていないが。

 そういった関係から、比較的タロスとの仲は良好である。最近ではお菓子を与えたりして、すっかりヨルムに懐いていたりもする。

「ヨルムさま~、あはようございます~」

 ヨルムに抱き着くタロス。小さな犬に向けるような、愛着がわく。

「タロス、ヨルム様の迷惑になっているんじゃなくて?」

「あ、グリム。居たのですか?」

 二人の間で火花が散るが、知らぬ存ぜぬを通すが勝ちだと、ヨルムは無視する。

「タロス、門を開けてくれないか。今日も少し外に出てこうと思っている。まぁ、夕ご飯が恋しくなる頃には帰ってくるよ」

 ヨルムの言葉を聞いた、タロスはすかさずヨルムから離れ、

「開門!」

 と大声で叫ぶ。その言葉通りに、東門が音をたて開く。

 外は、内側と違い一面の焼け野原と龍の死骸が至る所に転がっていた。その死骸を、幾人もの黒の軍服に身を包んだ者たちが、処理している。

「すみません、ヨルム様。なかなかに量が多いため、片づけにまだしばらくかかると思います」

「別に構わないよ。私は気にしないし」

 そのまま、門の外に歩いていくヨルム。

「「いってらっしゃいませ」」

 後ろで、二人が大きくお辞儀をする。それに合わせて、周りで作業をしていた者たちもヨルムに向かいお辞儀をする。

 堅苦しいのは嫌いだが、好意としては受け取っておく。ヨルムはそのまま、外に歩いて行きながら

「行って来る」

 と右手を挙げるのであった。


部隊って程、出て来ませんでした

次回から外です

果たして良い風景を見つける事は出来るのでしょうか

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