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始まり
雨の音がする…
重い瞼を微かに開けシャッター越しの窓の向こうを見た。
時間は既に午後13時を回っていて、気怠さと時間を無駄にしてしまったという憂鬱さから尚のこと起きる気がなくなる。
私こと小城 樹胡は現在地元の市立小学校に通う小学5年生の男子だ。
現在夏休み中につきお母さんの朝のうるさい金切声も夏休み中という事だ。
目をこすり空を見ると雲は大きな塊を残し他はまばらで所々太陽の陽が差している。
それは夏の通り雨の様ですぐ止むことはわかった。
そしてこの夏休みもまるで通り雨のように足早に過ぎていく事を私は知っていた。
手早く支度を済ませ、お母さんの家事の手伝いという制止を振り切り玄関を出ると丁度雨は上がった様で灰色のアスファルトに散らばる水溜まりは太陽光を反射させ、夏の暑さに爽やかな色をもたせた。
持ってく物は何もいらない。
必要なのは麦わら帽子くらいのもので、外の世界に駆け出して行く。
それがこれから起こる事の顛末、始まりはいつも通りに、日常的にしてなんの変哲もない少年の少しばかりの勇気のお話。