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ディダの問いかけ 弐

3/6

「姫様に、その覚悟はあるのか?」


そう言ったディダの表情は、いつになく真剣そのものだった。


「戦いになればそりゃ、相手を殺すことが求められるし、自分が傷つき死ぬことだってある。姫様の号令一つで皆がそういう場に立たされる」


「………ディダ」


ライルがここにきて、咎めるように名を呼んだ。


「殺される覚悟を持って、相手を殺せと姫様は命じることができるのか?」


「ディダ!!」


それでも尚口を閉ざさないディダに、ライルの鋭い声が響き渡る。


シン、とその一瞬場が静かになった。


「戦に出るならば、誰もが覚悟をしなければならない。自分の命が失くなることも、剣を持つこの両の手が相手の血に塗れることも。お嬢様一人が背負う必要はない」


ライルの言葉は、静まり返ったその場に酷く響いた。


その甘い響きに、一瞬揺らぎそうになる。


「そりゃ、俺も覚悟はしているさ。けど、姫様に必要な覚悟はそうじゃないだろう?

姫様の号令で、戦場は如何様にもなる。直接兵を率いることはなくても、姫様の命が俺たちの指針だ。俺たちは自身とその背後に立つ民達の命を背負う。けれども、姫様は戦場に立つ全ての者たちへの責任とそして“その後”に責任を持たなければならない。……そうだろう?」


ディダの問いかけに、ライルが口を閉ざす。


「そして直接手を下さない、けれども命令書にサインをするならば、姫様の手も血に塗れるも同然だ」


けれどもディダの言葉は正しく……だからこそ、胸に突き刺さる。


知らぬ存ぜぬでは、いられない。


……例え民がどう思おうが。


私の指示一つで、事はなされる。


守る為にと言いながら、戦えと命を奪えと指示をする。


私の指示一つで、本当に命のやり取りがなされる。


争いを望まない民達をも、巻き込んで。


……もしも戦いが起きた場合、私は戦えと命じることができるのかしら?


「……今、すぐにその覚悟を示せとは言わないけどさ。でも、先を見据えて備えろと指示を出すのならば、姫様も先を見据えて今から覚悟を決めた方が良い」


自身に問いかけたけれども、答えはでない。


「そうね。……貴方の言う通りだわ、ディダ」


随分と情けない声だった。


けれども、どうしようもなかった。


本当に、情けない。


ディダやライルに備えろと指示を出しながら、自分はまるで備えられてなかったのだから。


「私はまだ、貴方のその問いに答えることはできないわ。少し、時間をちょうだい」


「分かりましたよ。じゃ、俺たちは先に備えておくんで」


てっきり、私の答えを聞いてからでないと動いてくれないと思ったのに。


先んじて備えてくれると言ったディダの言葉に、少し驚いた。


「……ええ。宜しくね」



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― 新着の感想 ―
(・Д・)
怖がって何もしないでいると領民が犠牲になるんだけどな。 奴隷や娼館行きなら良い方で多くはその場で処置されますよ。
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