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プレゼント

「……お嬢様、大丈夫かい?」


セバスとセイはそれぞれ揺らぐ領と商会の対応を任せている。ターニャには、王都の動向と教会を調べて貰い、ライルとディダには領土内の治安維持の強化で動いて貰っていた。モネダは銀行と商業ギルドとのやり取りに掛かりきりだし、レーメにはセバスの手伝いを。だから、普段私が接する使用人で今この場に来るのは、メリダだけ。


彼女が入室した瞬間、下がりかけていた眉を上げる。


「……大丈夫そうに見える?」


表情を作り過ぎて、皮肉げな笑いになってしまった。


「失言だったね。少しでも疲れが取れるかと思って、ホラ。チョコレートとお茶」


「ありがとう」


チョコレートを一粒いただいた。うん、美味しい。疲れた頭に染み渡る。


「ねえ、メリダ。貴女にも色んなところから働かないかって誘いが来たのじゃないかしら?」


「そりゃあねぇ。私は喫茶店全てを実質任されている訳だし」


カラカラと、メリダは笑った。今はそんな陽気さが心地良い。


「破格な条件のところもあったんじゃない?」


私の問いかけに、一瞬メリダは驚いたように目を丸めて…けれどもまた、笑った。


「……今更私が欲しいなんて言われてもねぇ。ここまでこれたのも、全部お嬢様のお陰さ。だから、他のところになんて興味はないね」


「そう……」


「それに、お嬢様がこのまま、やられっぱなしとは思ってないしねぇ」


ニヤリと笑った彼女。


「……ご期待に沿えるように頑張るわ」


既にほぼ準備は整った。けれども、あと1つ足りない。今回は生半可には終わらせない。終わらせてやらない。徹底的に、逃げ場を失くして、追い詰める。そうでなくては、また付け込まれ攻撃される。そのための、ピース。


「……失礼します、お嬢様」


考え事をしていたら、何時の間にかメリダは去っていて代わりに別の人物が入って来ていた。


「……ディーン!!」


思いも寄らなかった人物に、私は思わず叫ぶ。


「な、何故貴方がここに……?」


「貴女の手伝いを」


「私の手伝いですって……?私が今、どういう状況か分かっていて、それでも来たというの?」


罪人認定された者のところから去るのなら分かるけれども、来るなんて信じられない。ニホンの感覚で言うところの、犯罪者に助けますなんて言っているのと同じだ。

実際だからこそ、商会からは何人も出て行ってる訳だし、領官からも私が破門されたにも関わらず、領主代行の地位を返上しないことに対する抗議の手紙が届いている。


「ええ、勿論です。だからこそ、お手伝いできることがあるかと思いまして」


「罪人相手に手伝いを?貴方も、ダリル教から目をつけられるかもしれないのよ。態々、そんなリスクを取るなんて…ありえないでしょう!」


疲れているせいかしら…さっきのメリダの時といい、随分と口調がキツくなってしまう。そうと分かっていても、今は止めることができなかった。


「ありえますよ。言ったじゃないですか。私は、既に貴女のモノだと。こんな時に力になれず、いつ力になるというのですか」


さも当たり前のことの言うディーンの言葉に、私は一瞬言葉に詰まった。


「それは……」


「それに私は貴女の力に成り、かつ貴女が求めているものをお持ちしましたよ」


サッと渡されたものとその続きの言葉に、私は声を失った。まさか、最後のピースを手に入れることができるなんて。しかもそれを、かれが持って来るなんて。最早驚きを通り越して、感動すら覚える。


「……それで、貴女の作戦は?」


ニヤリと彼は笑った。私のすることを分かっていて聞くなんて、人が悪い。


「貴方の想像通りよ。……そして、貴方がコレらを集めてくれたおかげで、ピースは揃ったわ」


「それは良かったです。…それで、いつ“開放式”を?」


「貴方の耳は、随分と大きいのね…もう、耳に入ってるなんて」


「王都では大分話題になっていましたよ。私も道すがら、耳にしましたし」




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