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不安

お待たせ致しました!今回は6話まとめての更新です!

……頭が、重い。

考えなければならない事が多過ぎて、頭痛がする。こめかみを抑えつつ、書類を捲った。


あの破門宣言を受けた後、セバスと共に作成した釈明文を送った。土地が一度売られ、建物もボロボロで修繕が必要であったこと。売られた時の売買契約書は私が保管していること。修繕ではなく、別の地に教会を建て直したこと。そして、その前に伺いを教会に立てたこと。


けれども、教会から破門の撤回はなかった。


「……見事な蜥蜴の尻尾切りね……」


「ええ。アルメニア公爵家の伝手を駆使して、かつて教会を売却した神官を探しましたが、見つかりません。恐らく、切り捨てられたのでしょう。また、アイリス様が取り壊し時に書状を送った担当も同様です。…教会という特殊な組織ですと、やはり公爵家という力を使っても得られる情報は限りがございます故に、これ以上の調査は困難でしょう」


(クダン)の神官さえ見つかれば、話は早いのだけれども……」


まさか構成員全てを開示しろだなんて、言えないし。見つからなかったという情報が、こんな短期間で得られたというだけでもマシな方だろう。


「それで?領内の様子は?」


「……僅か数日の間でございますが、既に不安の声が広がっております」


「そうでしょうね。領官たちは?」


「同じく。辞する者や休暇を取る者達がチラホラと出始めています。まあ、“そんなことよりも仕事!”という類稀な仕事中毒の面々のおかげで現状を保っていますが…」


それはそうでしょうね。そのやり取りや経緯を知らぬ者にとって、私は無断で教会を取り壊した者…神の地を潰した神をも恐れぬ所業を犯した者でしかない。


領地を預かるが故に、自身の利益の為にそのような行為に及んだ…と見られても仕方ない。


「交易も見事に落ち込んだわね。領地全体的に影響がすごいわ」


隣の領に引き続き他の第二王子派もウチから輸出する場合、またその為に領地を通る場合は通商料を上げると宣言し始めた。…理由も、同じ。


そのせいで、我が領地に拠点を構える商会は大損害だ。アルメニア領に拠点を構えるというだけで、そのような事態に陥っているのだ……早々に片を付けなければ、商会から見限られても仕方ない。


勿論、アズータ商会にとっても大打撃だ。そもそも会頭たる私が罪人認定されたのだもの。忌避する人々が出てきてもおかしくはない。


そして、勿論ここから出荷するものもあり、それらは税の分値上げをするしかないというのも痛い。


アズータ商会の商品を愛用していた貴族の方々からは、値段が上がることから少なからず不満が出ているものの、私そんな状態の為表立って文句が出ていない。庶民の方からは不満が出ているみたいだけど。


そして、ただでさえ値上げから数日の間に商会の売り上げは明らかに落ちているというのに、更に追い討ちをかけるように従業員達が次々と他商会に引き抜かれていった。それも、王都とか他領の店の従業員が。そんな訳で、生産が落ちて商会の売り上げも下がっていた。


そんな訳で、次々とウチから出していたものと似た様な物が他のところから販売されている。今までもなかった訳じゃないけれども、今回はウチから出て行った者達が直接製造に関わっている訳で…。なら、破門宣告をされた会頭がいる商会の商品よりも、そちらの似た商品で良いかと思う人も出てくるというものだ。


「……酷い顔……」



書斎の脇にある鏡を覗き込めば、目の下には隈がくっきりと現れていて、髪の毛はボサボサ。肌も荒れてる。


日本にいたワタシからしてみれぼ、教会の破門なんて…と思うけれども、本当にこの世界の教会って強い。

その発言力は今更言うに及ばず。

向こうは神様なんていう後ろ盾がある為、アルメニアという名は殆ど意味を成さず。

教会という組織自体、不可侵な領域の為中々交渉もできない。そもそも、その窓口に辿り着くことすら難しい。私が罪人認定されたからというのもあるけれども。


私の破門宣言に、第二王子派は勢い付いてお父様を攻撃し始める始末。お母様も催し物の

出席を全て自粛されている。王太后様が表立って大きく動けないのは、それだけ教会というのが建前上は権力に屈しない組織であり、あまり事を荒げることができないため。


ふと、私は見上げた。


ああ、頭が重い…。立ち上がれば、目眩がするだろう。


僅か数日。されど、数日。


殆ど眠らずに、刻一刻と変わる状況を把握し、対抗策を考え、そして話し合い。


時間との戦いだからこそ、焦り、そしてこの上ない緊張感の下での日々。


再び視界を下に戻す。やはり、視界がぐるぐると歪んだ気がした。


後、もう少し…後もう少しで、準備は整う。けれども、未だ勝算は見えてこない。これで良いのかという不安が、心に暗い影を落とす。戦う相手が大き過ぎる、というのもあった。時間があり、確りと下準備することができれば…とも思うけれども、そうも言ってられない。

お待たせ致しまして申し訳ありません。この対教会編が終わるまではまとめてアップしていく予定です。

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― 新着の感想 ―
今まで大したスカッと感が無かったのに加えて、今回の重ねたダメージで、読むのがしんどい。盛大にスカッとしたくて読んでるけど、ずっとこのままなのかな。
地球の知識をもってBC兵器を大量に用意すべき。 そして独立宣言。これしかない。
八百万の神様においでいただこう 手始めに商売繁盛の恵比寿様から…
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