表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
241/265

戦 参

本日六話目の投稿です

「……失礼致します!増援が来ました!」


待ちに待った朗報がきた。


「待たせたな」


伝令と共に現れたのは相棒である、ライルだった。


「本当にそうだな。……ま、思っていたよりも早かったけど」


ライルの登場に安堵して、つい笑っちまった。

勿論、本人には絶対言わないけれども。


「すまない。……それで、状況は? 何やら面白いことになっているな?」


地図を持って来させて、俺はそれをライルに見せる。


「こことここ、それからここ……港から街への主要な道は全て閉鎖させた。んで、あとは見ての通りだ。なるべく敵戦力を削ぎつつ防衛することに徹している」


「攻勢的な防衛だな。……役場の方には?」


「最低限の人数しか張り付かせることができてねえよ。いかんせん、人員が全く足りてなかったんだ」


「いや、そうだな。……だが、マズイな」


「ああ。奴らが動き出せば、こっちは挟み撃ちだ。今んところ動きは見せてねえが、いつそうなるか……」


「ならば俺が連れてきた人員を割き、そちらの制圧から始めるか」


「いや、正直それだとこちらが心許ない。まだ敵側は先遣隊を出して様子を伺っているような状況……対峙した感じ、こっちの懐具合を知っていて余裕ぶって遊んでいるような状態なんだよ。奴らが本格的に動けば、すぐにでもこの防衛陣は破られるぞ」


「本格的な行軍はこれからか。お前の嫌がらせが効いているしな」


「……そういうこと」


「とはいえ、この挟まれた状態では……」


「役場の方はこっちに任せてくれやしねえか?」


ライルが眉を顰めたとき、第三者の声が俺たちの会話に割って入ってきた。

困ります、という警備隊の制止の声を振り切って近づいてきたのは、つい最近接触した男……グラウスだった。


「グラウス。一体どういう風の吹きまわしだ?」


グラウスがこの場にどのようにして現れたのかは、今更問うことはない。

何せ、東部で圧倒的な影響力を持つボルディックファミリーの頭だ。


そもそも地の利は彼らにあり、入り込むことなど簡単にできるだろう。

よしんばそうせずとも、彼ほどの影響力を持つ者ならば正面突破も可能なはずだ。


「なあに……ボルディックファミリーの名を騙った奴らに、ケジメをキッチリつけさせようと思ってな。どうやら前回の制裁じゃあ生ぬるかったらしい……ボルディックファミリーの名を騙るとどうなるのかっていうのを見せしめないとなあ」


俺の問いかけに、グラウスは肩をすくめつつ何でもないことのように答える。


「それに、前回の件じゃあ、お嬢ちゃんには随分と大きな借りができちまったんだ。そろそろ返さないと、恩が雪だるま方式で増えそうな気がしてなあ」


ぽりぽりと頰を掻きつつ言う様は、明らかな照れ隠しだった。


「……だが、良いのか? 役場を占領している奴らは、恐らくただの暴徒ではない……アカシア王国軍の先遣隊だぞ」


ライルは、彼に忠告の意を込めてそう伝える。


「なあに、俺らには俺らなりの戦い方っつうもんがあるんだ。心配せずに、お前らは街を守ってくれよ。……流石にガチンコの戦いは俺らじゃ荷が重い」


ジッと、伺うようにライルと俺がグラウスを見つめる。

その視線に目をそらすことなく、むしろ不敵な笑みすら彼は浮かべていた。


「正直、猫の手も借りたいほど……だ。任せても良いか?」


「猫よか働くさ。利害が一致している今に限っては、だが」


ライルの言葉に、グラウスは軽口で返す。

その言葉に、俺たちは頷いた。


「頼んだ」


「あいよ、任された。こっちも、俺たちの街を頼んだぞ」


「ああ」


そうして話が纏まると、グラウスはその場をさっさと去って行った。


俺たちは彼が去った後、すぐさま再び地図を前に計画を練る。


「……これで、良いな?」


かなりの時間話し合い、それが纏ったところで俺たが問いかけた。


「ああ」


それに対し、ライルが力強く頷く。


「よし、じゃあこれで展開するぞ」


俺たちもまた、その場を離れる。

グラウスとの約束を守るために。

後ろに控える勇気ある民たちを守るために。

……何より、俺らの主人である姫様の思いを守るために。


静かに闘志をみなぎらせつつ、足を前へと動かした。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ