アルメリア公爵領へ
短いですが、本日三話目の投稿です
「……失礼致します、隊長。各々の補給が、完了致しました」
何とか兵士たちの士気を上げつつ、彼らの心を掌握することに成功した後、私は彼らを率いてアルメリア公爵家に向かっていた。
いつの間にか『隊長』と呼ばれるようになっていたけれども……まあ、統率する上では必要なことだろうと私はそれを訂正することはない。
途中途中で休憩兼補給を重ねつつ、およそ通常の二倍の速度で、着実にアルメリア公爵領へと近づいていた。
「結構。そろそろアルメリア公爵領に到着する……各人、再度装備の確認を徹底してさせておくように。あと、十分で出るわ」
隊長という立場に合ったような言動で振る舞う。
「はっ!」
伝達が終わった後、私はザッと休憩している護衛兵たちの様子を伺った。
兵士たちの緊張が、アルメリア公爵領に近づくごとに増しているような気がする。
特に、今まで戦いの場に赴いたことのない者については、それが如実に表れていた。
「シュレー。緊張で固まっているような者がいたら、声をかけておいて。適度な緊張は良いけれども、過度なそれは動きを鈍らせる」
「畏まりました。ただ、すぐに吹っ飛ぶと思います。貴女の戦いを、間近で見れば」
シュレーもまた、普段の軽口と飄々とした雰囲気はどこへと行ったのやら……重々しい雰囲気を漂わせていた。
私と戦場を共にしたことのある古参の面子はシュレーのように、新たな面子とはまた違った緊張感の高まりを見せている。
押し潰されそうなほどのプレッシャーを伴う緊張感が前者だとすれば、興奮やら昂りといった感情を伴う緊張感が後者といったところか。
後者については、私が先頭に立っているということが大きいのかもしれない。
既に私の戦いぶりを間近で見たことのある彼等は、私と再び戦場に出ることに興奮しているようだった。
かつての、戦いを思い出して。
それは先ほどの、シュレーのように。
「果たして、それはどうだか。とにかく、頼むわ。問題があると貴方が感じたのであれば、報告をちょうだい」
盲信と表して過言ではないほどの彼の様子に、私は苦笑いとともに、思わず普段の口調で返す。
そして十分後、問題なく全ての指示を完了させたというシュレーの報告を受け、再び私たちは出発した。




