表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
225/265

報告

本日投稿三話目です。

月明かりの下、私は窓辺に腰掛けていた。

淡い光の景色は、昼間の太陽の明るい光のそれとは異なる顔をみせてくれて、それがまた美しい。


……静かだった。

とても遠くの地とはいえ、同じ国で戦争が起きているとは思えないほど。


ふと、私の隣にある植木鉢に視線を向ける。

咲いている花は、私が領主代行の地位についたばかりの頃に視察として領を周った時に購入した花だ。

とは言っても、勿論その花そのものではない。

あれから幾つもの季節が巡り、花は種を遺して散った。

その種を埋めて育て、花が咲いては種を遺して枯れることを繰り返し……今この植木鉢に植わっている花は、果たして最初の花から何代隔てた子孫なのだろうか。

柔らかく美しい花弁を、撫でる。

月光に照らされた花びらが、暗闇の中にも関わらず……否、だからこそより美しく見えた。


思えば、色々なことがあったものだ……と思いつつ、私は膝の上に乗せていた読みかけの本に目を移す。

そのタイミングで、扉からノック音が聞こえてきた。


「失礼いたします、お嬢様……お嬢様?」


入ってきたターニャが、胡乱げに私を見つめる。


「どうしてそのようなところに腰をかけていらっしゃるのですか?」


「休憩がてら、少し外の景色を眺めていたのよ」


これ以上ここに腰掛けていてはターニャの顔色が晴れないだろうと、私は窓辺から立ち上がり、本を机の上に置いてから椅子に座った。

ターニャはホッと安心したような表情を浮かべた。

けれども次の瞬間、私の持っていた本を見て僅かに顔を曇らせる。


「今からでも、詰め込めるだけ詰め込もうと思って」


苦笑いと共に、彼女に告げた。

私が読んでいたのは、アカシア王国についての本だった。

アルメリア公爵家に保管されている本の他、他国より取り寄せた本なども暇を見つけては読んでいる。


私はこの騒動が終息するまで彼の国に赴くつもりはないが……果たしてどうなることか。

今のところ返答は国内が混乱しているため保留とさせていただいているけれども。


「……左様でございましたか。少し、お耳に入れたいことがございまして参りました」


「そう……聞かせてちょうだい」


「未だ詳しい戦局は王都に届いておりませんが、戦端が開かれました」


ついに始まったのか……と、私は思わず息を吐いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ