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再会 参

五話目です

「……私からも、よろしいでしょうか?」


彼は口調を再び改めた。


「まあ……殿下。そのように改まって、一体どのようなことを?」


「国政に携わる者たちを、アルメニア公爵領にある高等学部で学ばせる機会をいただけませんか?」


それが本題か、と私は内心笑う。


「……領政と国政は大きく異なるかと思われます。学院で学んだとしても、それが果たして国政に役立つか……」


「今後、王国直轄領についてはまさにその領政を習得していることが重要です。……それに、学院で学ぶことができるものは、領政のみではないでしょう。その他の学科についても、学べば必ず身になる筈です」


「……なるほど。ですが、大変恐縮ですが……我が領地も未だ教える人手は全く足りていません。その上で国政に携わる方々を受け入れることは大変困難なことかと」


「全員とは申しません。貴女の領地の領官のように交代制で学ばせていただければそれで良いのです。……留学という形で、一定期間置かせていただくのが一番良いかと」


「なるほど。どれぐらいの人数をどれぐらいの期間学ばせるかにもよりますが……そこは学園長と確認を取りましょう」


「……感謝致します」


「できればベルンにも話は通しておいてください。遠からず、彼が領主として上に立ちますから」


「……。貴女は、領主代行の地位を返上するのですか?」


「ええ。……私も女の身でありますから、遠からず嫁ぐことになりますから」


それは、意識せずに出た言葉だった。

私の頭では、既に決定事項。……単に心が追いついていないというだけで。

だからこそ、口から自然とそんな言葉が出てきたのだ。


ピクリ、と彼はその言葉に反応する。


「……貴女は、あの話をお受けするつもりですか?」


彼が真剣な表情で、そう問いかけてきた。

それに、私は衝撃を受ける。第一王子……否、今となっては王位に就くことが確実な彼が知っていることは、当然のことだというのに。

何故私は、自ら決着をつけるような展開に持ち込んでしまったのだろうか。


「……ええ」


考えて、考えて……けれども結局のところ隠すこともできず、絞り出すように、答えた。


「そうですか……」


私の答えに、彼はただ一言答えた。

それは彼にとっては肯定でも否定でも、何でもない……ただ反応しただけに過ぎないのかもしれない。


でも、私には肯定に聞こえてしまった。

そしてそれに衝撃と……悲哀を感じている自分がいた。


……何て、身勝手なのだろうか。

自ら引導を渡したというのに、勝手に悲しみ……憤っているのだから。

心のどこかで、彼が一言目に引き留めてくれると期待していたのだ。

引き留めて……私を求めてくれないかと。

そんな浅ましい自分の考えに、吐き気すら感じた。


「……どうかされましたか?」


この茶会で、そう問われたのは二度目か。

第一王子との茶会だというのに、私は気を抜き過ぎている証だ。


「大変失礼致しました。……殿下。話は以上ですか?」


「え……」


「申し訳ありません。ここ最近、体調が優れず……失礼させていただきます」


強引にそう言い切ると、私は立ち上がった。

そして一礼をすると、そのまま逃げるようにその場を離れた。


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