再びの招集 弐
二話目です
「……宜しいでしょうか」
「どうぞ、ダングレー侯爵」
ダングレー侯爵といえば、ミモザの婚約は解消されるに違いない。
……何せ、相手はベルンが名を挙げた家の一つであったし。
万が一にでも罪から逃れられないよう、かつてモネダとターニャに調べてもらったリストをベルンに送りつけておいたから大丈夫な筈。
今度、ミモザにお祝いの手紙を書かないと。
……婚約破棄でお祝いというのも、おかしい話だが。
あとはミモザの恋する方が相手がどう動くか……だけど、それはもう私にはどうすることもできない。
ただ、ミモザには幸せになって欲しいと思う。
貴族だけど、貴族としてではなく。
一人の友人として、心の底から願っている。
「今後の施策についてはよく分かりました。私が問いたいのは、アルフレッド王子の戴冠についてです」
「それについては、私から答えよう」
ベルンを遮り、アルフレッド王子が口を開く。
「皆も承知の通り、今回の件の爪痕は深い。それ故、自体の収集を優先し、一年後に戴冠式を行うつもりだ」
「……。王子のお考えはもっともなことです。しかし……誠に遺憾ながら未だ反対勢力が燻っているのは事実。その旗印となり得るエドワード様の刑も執行されておりません。なるべく早く王位に就き、アルフレッド王子の地位は確固たるものだと内外に示す方が良いでしょう」
「……。ダングレー侯爵の忠言は、その通りだ。なるべく早くに戴冠式を行うよう、調整を行う」
彼の言葉にダングレー侯爵は頭を下げ、再び席に着いた。
会議はそのまま終了し、再び解散となった。
……この後は、領地に戻っても良いし王都に残っても良い。
私自身は早く領地に戻りたいと思うが……さて、どうしようか。
そんなことを考えていたら、王宮の使用人に呼び止められる。
「……アルメニア公爵令嬢、アイリス様。殿下がが、お呼びです」
その言葉に、一瞬固まった。
恭しく渡された手紙は、確かにディーンの筆跡と彼のサイン。
まさかこのタイミングで、呼ばれようとは……。
「……分かりました。お伺い致します」
手紙は本物だが、用心に用心は越したことがないと、ターニャを伴って案内人について行った。
果たして、辿り着いたのは王宮の中でも奥に位置する庭園だった。
既にディーンは席に着いている。
彼の正面の席に案内され、私はそこに腰を下ろした。




