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二度目の招集

それから間も無く、ベルンが宣言した通り再び召集がかかった。

前回名が挙がらなかった者たちのみが、集っていた。

私は今回も父の名代として参列している。

相変わらず、女性は私一人。

皆が席に着く。それから時を置かずして、ディーンが入室してきた。

彼の後ろを付き随うように、ルディとベルンも入室する。


「再び集まってくれたことに礼を言う。今日は先だって告げた通り、改めて私の今後の考えと方策について伝える為に集まってもらった。心して聞くように」


ディーンが挨拶を済ますと、彼はベルンに視線を向けた。

ベルンは心得たとばかりに頷くと、口を開く。

皆がベルンの方を注目する最中、私は耳はベルンに向けつつも相変わらずディーンを見つめていた。


……遠い。

身分については、王族に対して大変不敬だが……ただのディーンであった頃よりも、今の方が断然近い。

けれども、何故かアルメリア公爵領にいた時よりも随分遠くに感じてしまう。


……それも、そうか。

私も彼も、互いに背負っているモノがある。

私は絶対に妥協しないし……恐らく彼も同じ。

同じ方を見て同じ道を歩いていたあの時とは違って、今の私たちは違う道を歩き始めているのだ。

こんなに近くにいるのに、寂しさに胸が締め付けられるとは思ってもみなかった。


私は、胸を抑える。

今回の会議で、こうなることは何となく想像がついていた。

……だからこそ、正直今回は出席したくなかった。


覚悟を決めていたが、今は決めることなどできなかった。

この距離を、まざまざと自覚させられることなど……。


私がそんな感傷に浸っている間も、ベルンの言葉は続いていた。

まず、没収された貴族の地は全て王族直下の管理地とすること。

また今回罪を犯さなかった家についても、以後再びこのようなことが起こらぬよう、各地に監査役として王宮の官僚たちをそれぞれ数名派遣させるらしい。

彼らには領政への口出しを行う権限が与えられる。

王国の政策が反映され易くなるのと同時に、領主と王宮から派遣された者たちが互いに互いを監視する環境を作っていくのが目的だ。


アルメリア公爵領にも、時を置かずして派遣されてくるだろう。

今まで上が私一人だったからこそ、改革を強引に即時に対応させることができたが、今後はどうやらそうはいかないようだ。


そもそも、会議の場でのベルンを見る限り……ここ辺りで私の領主代行生活も潮時なのかもしれないとも考えていたが。


会議は淡々と、進む。反対らしい反対は、起こらない。

それもそうだ……この会議に参加しているのは、大多数が第一王子派。

つまり、彼の構想を大半の者たちが既に理解し付いてきていたことに他ならない。

彼の構想は、以前サジタリア伯爵が夜会で漏らしていたので私も覚えている。


『あの御方なら、成し遂げるでしょう。既存の体制を変え、真に1つの王国として』


今回の案は何てことはない……正しく、王権の強化の為の一手だ。

中立派であった者たちも、それが分かっていながら反論をしない。


第一王子派が多くいる中で声をあげるのが難しいというのもあるだろうが、何よりあれだけ大きな事件が起きてしまったのだ。

何か反論しようにも、すぐさま理論武装をして突き返してしまうだろう……ベルンが。

見た目が変わったことにも驚いたが、何よりも彼の中身が変わった。


長年王宮で揉まれてきた狸や狐たちと対峙し、彼らの訴えに対して一歩も引かずに渡り合う。

その苛烈な応酬については、最早王宮内でも語り草となっているそうだ。


魔王の血筋は途絶えていなかった……誰が言い出したかは知らないが、そんな言葉が出てくるほど。


一方で、私の糾弾の時とは異なり、新たな情報が出た際には徹底的にそれを調べさせ状況と照らし合わせさせているという柔軟な一面も見せているらしい。


本当に成長したというか、一皮剥けたというか。

感慨に耽っていると、初めて発言が貴族側からなされた。


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