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会議 肆

二話目です

「既に手は打った。偽金貨はほぼ回収し、市場に流通しているのはごく僅か。それも、発見次第王国が無償で本物の金貨と交換することを約束する。これを大々的に告知し、また、人の口の端に乗るよう情報操作も行なった」


「まあ、既に回収されていたのですか。それは、どのようにしてでしょう?」


「……商人に備蓄分を売った者たちは、時を置かずして別の商人と接触している筈だ」


覚えがあるのだろう……何人かの貴族たちが、顔色を変えた。


「前教皇の収集品を餌に使わせてもらった。まさか、あんなに簡単に金貨を手放すとはな。……民の為に使うのであればともかく、まさか自らの欲の為に使おうとは……呆れて物が言えなかった」


「なるほど……それで金貨を回収したのですね。王国の財も然程痛みませんし、何より教皇の品となれば、その価値は高い。皆様の心をくすぐるに足るものが多いでしょう。そして彼らがすぐに用意できる現金となれば、それはその少し前に手に入れた金貨の可能性が高い」


「ああ。金貨擬きは全て溶かし不純物を取り除いて、再び純正の金貨を作製させた。多くをそれで回収したが、その後もお前たちの行動は全て見張らせ、私の手の内の者でない者へと渡したものもほぼ回収させて貰った。幾分か間に合わず流通させてしまったものもあったが……その件については、アンダーソン侯爵。貴殿の貢献もあってのことだ。ここで改めて、礼を言おう」


彼の言葉に、伯父様は頭を下げた。


「ですが、アルフレッド王子。肝心の食糧品はどうされるのですか?」


「既に私自身が海を越えた他国に赴き、交渉は済んだ。初めは備蓄分を取り戻すだけのつもりであったが……まさか災害が起こるとは予測できず、皆には苦しい思いをさせて申し訳なかった。……私の到着と同時に、この国に品も到着している。後は各地に配分するのみ。それについて、ダリル教を代表しラフシモンズ司祭に礼を言おう。ダリル教は此度の国難を憂い、資金の援助を行ってくれた」


「……過ちを犯しながら、それでも寛大な処置をしてくださったのです。この国の民の為に使われるのであれば、それは本望」


ラフシモンズ司祭は、そう言って頭を下げた。

ここで、ダリル教の地位を正式に回復させることが彼の狙いかと私は舌を巻く。

そして彼とダリル教の密接さを示しつつ、頭を下げさせることで彼とダリル教の力関係まで示した。


ラフシモンズ司祭も彼の意図を察しつつ頭を下げたのは、それが彼の目指す『正しいダリル教』の姿を内外に示す良い場であったからだろう。

昔は随分貴族たちに寄付を募ったり慈善パーティを求めてきていた、ダリル教。

その時溜め込んでいたものを吐き出したということか。

恐らく、前教皇より没収した資金なんかも当てたのであろう。


「……貴方様が王に就くというのであれば、この国は安泰でしょう。我がアルメニア公爵家は、貴方様を全力で支持しましょう」


そう言って、私は頭を下げた。

まさか、ディーンが第一王子だったとは……未だ頭は状況に追いついていない。

けれども、アルメニア公爵領領主代行として、頭を下げる。


同盟の要であるアンダーソン侯爵家当主とディーンは協力関係。そして次期アンダーソン侯爵家当主であるルディも彼の側近。

同盟を結成した皆に何の相談もせずに頭を下げたが、そもそも同盟の要であるアンダーソン侯爵家はディーンと密接な関係を築きあげていることを公にしているし、その他も元々第一王子派の面々が多くいる。

……だからこそ、今の私からの第一王子への言葉も問題はない。


そもそもこの同盟は第二王子であるエド様とマエリア侯爵家一派への対抗のために結ばれたものだから、エド様が失脚した時点で元々の意味が消失したか。


これで彼は……アルメニア公爵家とアンダーソン侯爵家が支持していることをこの場で示せた筈だ。

そしてその二家の有用性は、既に彼が説明した通り。


それと合わせて、彼は自ら実績を作った。

今回の件を終息に導く道筋を立てたのは他ならぬ、彼。

ここで彼に逆らうことは、自ら救いの道を拒むことと同じ。

頼みの綱であるエルリア妃とマエリア侯爵家は、既に捕縛されている。


「す……素晴らしい王の誕生ですな」


「そ、そうですな。我らは素晴らしい瞬間に、立ち会いました」


それまでエド様の支持に回っていた貴族たちが、次々とディーンを褒め称える。

その波は次第に大きくなり、会場中から拍手が沸き起こった。


「皆、騙されるな!」


先ほどまで呆然としていた、エド様が怒声をあげた。


「さっきは押し切られたが、此奴が兄上だという証拠は何もない!この侍従はアンダーソン侯爵家の者!当主と結託して王位を簒奪しようとする不届き者に違いない」


「だ……誰か!」


ユーリが会場の外に向けて叫んだ。


「どうかされましたか?」


騎士の恰好をした者たちが、中に入る。

彼らの姿に、エド様とユーリは安堵の息を吐いた。


「その者を捕らえよ!王位を簒奪せんとする不届き者だ!」


彼の叫びに、けれども騎士たちは動かない。


「何故動かん!」


「エドワード様。恐れながら、王家に仕える我らが、王家に剣を向けることなどできる訳がありません」


「何を言っている!こいつが兄上だという証拠はどこにある!」


「どこと問われましても……光栄なことに、離宮でお会いしたことがございますから」


エド様と騎士たちとのやり取りを、呆然とユーリは見ていた。


「違う……」

 そう呟きながら。


「違う……。私、彼らを知らないわ……。騎士団長はどこ!」


「騎士団長は、蟄居させている。そもそも、メレーゼ伯爵は籍を置いていただけの者であり、実務経験はほぼないに等しい。そんな者が騎士団長に就ける筈がないのだからな」


取り乱すユーリに、ディーンは楽し気にそう言った。


「そういった騎士団に相応しくない者が何人かいた。既に、彼らは役職を解いた。……さて、先ほどの件は引き続きこちらで動くので、この場で話すことはもう無い。次の議題に移ろうか」


一体何を話すのかと、皆が一様に首を傾げる。

かく言う私もその内の一人だった。


「その前に、衛兵。エドワードとユーリを捕縛しろ」


「「なっ!」」


二人が抗議の声を上げる前に、彼らを囲んでいた衛兵が素早い動きで二人を捕らえた。


「何故……!」


エド様が捕まりながら、それでも叫んだ。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 遂に決着がついたか、これでアイリスも幾分か楽になるな。
[良い点] エドユーリざまあwww [一言] しかし、ざまあwww までが長かった…
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