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召集

王都に来てから三日後、私は王城へとむかった。

今日は各家の当主が王城に召集されている。

私はアルメリア公爵家当主代行として、それに参加することになっていた。


周りの者たちは、見事に男性ばかりだった。

女性は私以外誰もいない。

私も今日はタキシードのような上着を羽織り、同じ生地のスカートを履いている。

別に指示があった訳ではないが、ようは気持ちの問題。


謁見の間とは異なる、大会議室。

幾つもの席が等間隔に、中央に向かうように円状に並べられている。まるで、議会のような造り。


ここは王国の建国時の名残だ。

この国はかつて幾多もの地方有力者を懐柔し時には征服し国として成り立った。

それ故、創立当初は混乱を避けるよう、ここで地方を治める有力者たちが一堂に会し話し合いを行い、その意見を王が調整し、王国の進むべき方向を定めていた。


私を見かけては、幾人かの貴族たちがヒソヒソと話す。

ある者は眉を顰め、ある者は蔑む。

……露骨なその視線に、私は正直苛ついていた。


ふと、たくさんの人々に囲まれているアンダーソン侯爵家当主である伯父様の姿を見つけた。

伯父様も私を見つけたのか、笑顔を向けてくれる。

少しだけ嫌な気分が吹き飛んで私も笑顔を向けた。


席は予め定められている。それは、家の序列で決まっていた。

私は公爵家のため最前列に腰を下ろす。

横に座るマエリア侯爵の存在に、私は眉を顰めた。

それは、彼と敵対関係にあるからということだけではない。

座る位置は建国当時の決まりのまま……厳格に定められている。

そもそも円形状の座席の配置は、王族に近くなればなるほど席数が少なくなるようになっていて、それはつまり家の序列が上がれば上がるほど数が少なくなるからということに他ならない。

各家の経済状況云々ではなく、純粋な家の序列……つまり、この最前列は同じ公爵家しか座ることを許されていないのだ。

だというのに侯爵家でありながら、公爵家と同等の扱いのそこにマエリア侯爵は当たり前のように座っている。

誰も咎めないことが、どれだけ異常なことか……。


痛む頭を抑えつつ、辺りを見回す。

今回は殆どの貴族が出席していた。それは、職務を返上したサジタリア伯をはじめとするアルフレッド第一王子派の貴族たちすら。

唯一、メッシー男爵の姿だけは見つけることができなかったが。



王族の入場を告げる侍従の声に、部屋は一斉に静まり返った。

そして、エルリア妃とエド様そしてユーリが前の扉から現れて席に座った。


「今日皆を呼んだのは他でもない……この国の王のことについてです」


席に腰を落ち着けた後、エルリア妃が厳かに語り始めた。


「皆も知っての通り、今この国は大変な状況にあります。だからこそ、この国に強い統率力を持つ者が必要かと思います。そしてそれは、ここにおりますエドワードを置いて他におりますか?」


問いかける口調であったが、私の耳には断定的に聞こえた。恐らく、他の者たちにも同様に聞こえた筈だろう。


「妃の言う通りだ! エドワード様ほど、王に相応しい者はいない! 皆、新たな王の門出を祝おうではないか!」


マエリア侯爵の言葉に、第二王子派であった者たちが拍手と共に立ち上がった。

それに応えるように、エド様は立ち上がる。


「皆、ありがとう。皆の気持ちに応えることができるよう、立派な王となることをここに約束する」


私は、エルリア妃とエド様の言葉に呆気に取られた。


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