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お母様は、チート

早速商品化したものをお母様に送ってみたところ、お母様はそれらをえらく気に入ってくださったらしく、あちこちで宣伝してくださった。その結果、貴族の中では勿論、少々高めな値段設定ながら平民の間でも人気商品としての地位を確立しつつある。……本当に、お母様は宣伝上手だ。密かに私の中ではお母様を宣伝部長と呼ばせて貰っている。


もっとも、商会の規模が拡大すれば拡大するほど、当然のことながら私の仕事量は増えていく。徐々に従業員の人数も増やしているし、権限も可能な限り与えてはいるのだけれども、どれもこれも稼働してから1年も経っていないものばかりで、まだまだ私も直接携わっておきたいのだから仕方ない。…健康には気をつけねば。


「……アイリスお嬢様」


「あら、セバス。どうしたの?確か、貴方との話し合いは午後からよね?」


「それが、奥様が午後にお帰りになられるとの知らせがございまして…」


「え?お母様が?この前の手紙にそんなこと一言もそんなこと書いてなかったのに…」


「兎も角、ご指示を」


「そ、そうよね。とりあえず、使用人達に玄関周りとダイニングルーム、それからお母様のお部屋の清掃をさせて。普段から綺麗にしてくれてるけれども、改めて。それから、玄関に飾ってある花を変えて。先日お渡しした商品と同じ薔薇にしましょう。あとは…料理はデザートに新商品であるフォンダンショコラをお出ししようと思うから、それに合うように献立を立ててちょうだい。フォンダンショコラが濃厚な分、少しあっさりしていた方が良いわね」


「畏まりました」


「それから、お茶はハーブティーをお出ししましょう。詳しくはアズータ商会の喫茶ラインの面々が知っているから、そこで聞いて」


因みに、喫茶ラインとは新しい呼び名。それまで貴族ライン・平民ラインとしていたが、その呼び方もあまり良くないかなという私の考えと、富裕層や貴族達も来店できるような喫茶店も開店させ始めてるからね。

そのため、現在チョコレートでは喫茶ラインと製菓ラインというように分かれている。

あ、でも貴族ラインは貴族ラインでそのまま残していますよ?彼らって特別対応大好きだし。会員制にしてみたら、会員になりたいという希望が出るわ出るわで嬉しい悲鳴があがってる。

その会員となると、王都と領都にある専用の店に来店できる資格を得る。そこでは、我が商会が扱う商品“全て”を見ていただくことができるという仕組み。

つまり、製菓に限らず最近取り扱いを開始した美容製品もね。美容製品だと、お好みの香料で香り付けしたオリジナル美容液等々が売れ筋。製菓も注文対応しているし、その場で食べれるよう別ブースで喫茶店も併設してある。


…そんなことより、お母様が来るならスケジュール空けなきゃ。と我に返り、スケジュールの確認。最近ターニャが私の秘書と化している。本当にありがたい。

そして、何とかスケジュールを調整してお母様の帰りを待つ。あえて言うのならば、ごめん…皆。皆の負担が大変なことになってしまって本当に申し訳ないので、到着したという知らせがくるまで細々とした事務を行う。数字の確認とかね。



「奥様がご到着されました」


「ありがとう、セバス」


私も早速玄関に向かう。おお、廊下もいつも以上にピカピカ輝いているわね。


「お帰りなさいませ、奥様」


主だった使用人と共にお母様のお出迎え。


「おかえりなさい、お母様」


扉の方から現れたのは、プラチナの髪が輝く絶世の美女。ああ、我がお母様ながら本当に美しい……。社交界の華と呼ばれるお母様は、今尚貴族の中でも憧れの存在であり、社交界で多大な発言力を有する。…それもあって、アズータ商会の宣伝部長としてこれ以上ない方なのだけど。


「ただいま帰ったわー。突然ごめんね、アイリスちゃん」


性格は温厚。家族に向けてはこんな喋り方だけど、勿論外では全然違いますよ。なんて言ったって社交界の華…完璧な貴婦人と称されていますから。


「いえ、私もお母様に久しぶりに会えて嬉しいです」


「まあ、可愛いこと言ってくれちゃって。でも、アイリスちゃんがこっちに来る時ゆっくりとお話できなかったから、本当に嬉しいわ」


「でも、良かったのですか?まだシーズン中ですよね?」


「大丈夫よー。公式行事は全部終わったし、仲の良いお友達には知らせてあるし……ああ、そういえば騎士団団長の奥様からお茶会のお知らせがあったけど、行く気ないしねえ」


……お母様、流石です…と思いつつも、口にはしない。きっと今頃、騎士団団長の家の人たちのお顔は真っ青になっているだろうなあ…。なんて、思ったり。

なにせ、お母様が出席するのとしないのとでは、その催し物の格が変わると言われている程である。

正直そこまで?と思わなくもないが、これが本当のこと。公式行事は別として、各家が催す催し物は“どのような人物を集めることができるのか”で格が変わる。で、社交界の華と言われているお母様が出るのと出ないのでは、大きく差がある訳だ。

仮に出席して貰えても、お母様が席を立つタイミングがいつになるか主催者側は気が気ではないらしい。お母様があんまり早いタイミングで帰られるのが続くと、センスがないわねっとなってしまうのだと。

夜会だとか茶会って夫人の力量が試される訳で…王家の催し物だって、公式なものでなければ王妃の力量が試される場なのです。出席さえすれば、失礼に当たらないし。

本当、お母様って存在自体がチートなのよ。


……それは、兎も角。ドルッセンざまあと思った私って性格悪いわね。でも、全く申し訳ないと思わないのよ。


誤字のご指摘ありがとうございます。

早速直させていただきました。

感想も大変嬉しく思います。

未熟な面が多々あるかとの思いますが、今後とも宜しくお願いします。

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