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美意識は世界共通

……さて、銀行設立から半年が経った。この半年の間に、公共事業第一弾である道路整備は稼働を始め、着実に整えられている。

銀行にも、まずは商会の者たちが商会名義で口座を作り、預金していった。するとその商会に関係する者が個人で口座を作り、それが更に広まり…と、都市部では大分銀行の存在感も大きくなってきた。それに伴い、モネダも忙しそうにしている。課題としては、どう都市以外にも広げていくか…なのよね。

学園建設は資金も無事溜まり、現在建設中。出来上がればすぐに稼働させる予定だ。とはいえ、高等部を優先的に建設させているから、初等部に領民の子供達全員が通えるようになるまでは、まだまだ道のりは遠い。


私の仕事は減ることはなく、寧ろ増えていく一方だ。流石に最近はちょっとオーバーワークかなとも思うので、領政を担う官僚たちを集めることを急務としている。既に我が家の中でも領政に携わってきた者たちは、所属を其方に移させて仕事に当たらせていた。

現在ある部門は、財務・文部・民部・工部・法務。その上に、私という領主代行がいるという体制にしている。

因みに財務は税務と兼任になっており、各部が出した案の費用を計算し実現可能か天秤にかけ、了承が出たら銀行から費用が出るという形式。また、税務面では、今後の税収の改革も共に話し合う存在だ。

文部は日本で言うところの文部科学省と同じような仕事。学園で教える内容の制定、それらの費用の勘案・それから学園の人事権なんかもそこの管轄だ。

民部は領民を管理する部門で、現在は戸籍を作るために各地を奔走している。…何れは、社会福祉もここに担って貰おうかななんて考えている。

工部は道路の建設・公共設備の設立なんかを一手に担う部署。つまり道路整備を大々的に行っている今、最も忙しいといっても過言ではないかもしれない。

法務はその名の通り、領の法を整えることが仕事。今は現在の慣習法から体系づけ、法として整えるという作業を行っている。



と、疲れたし湯浴みでもしようかしら。


「お嬢様、どうされたのですか?」


「珍しく時間が空いているし、少し疲れたからお風呂に入りたいの。準備して貰える?」


ターニャに伝えると、ターニャはすぐさま準備を始めてくれた。最近ターニャはえらく過保護。…そんなに私、疲れているように見えるかしらね?


「……何だか今日はとても嬉しそうですが、何かあったのでしょうか?」


「あ、やっぱり分かっちゃうかしら?ふふふ、欲しいものがやっと手に入ったのよ」


ふふふ…半年間忙しい合間をぬって研究に研究を重ねて漸く出来上がったもの。それを今日、試してみようと思うのよ。


ゆっくりお風呂に浸かり、疲れを癒すと早速それを使ってみた。はああぁ、ローズの良い香りがする。


上機嫌のままお風呂から上がると、ターニャは私の身支度を整えるべく控えていた。


「失礼します、お嬢様。御髪を整えますね……って、え!」


ターニャは私の髪を見て、驚いたように固まった。ふふふ、凄かろう?普段顔色が変わらない彼女がここまで表情に出すのだから、効果は上々だろう。



「御髪がとても綺麗…まるで輝いているようですね。失礼ですが、お嬢様。これは一体どうしたのでしょうか……」


「ふふふ…コレを使ったのよ」


私が出したのは、小瓶。中には薄黄色の汁がたくさん入っていた。


「これは、何ですか?」


「リンス、と言ってね。髪の毛を艶やかなものに整えてくれる大切なものです」


じつはこの世界リンスが存在しない。皆、普通に石鹸で洗って終わりらしい。この半年間、どれだけ我慢したことか。因みに最初の3ヶ月間はそこまで頭が回らなかった為、気づかなかったけれども。気づいたら気になり出すのが人の性。……シャンプーだけだと髪が傷む。それを分かっていながら、シャンプーだけで終わらせる苦痛。アイリスの髪がこれまたお母様譲りの美しいプラチナだったからこそ、余計ストレスだった。

前世で手作り石鹸やらシャンプーリンス、化粧水等々を作ることにハマっていたけれども、流石にこの世界で作るのには時間がかかってしまった。

どうせ作るであれば…と拘り抜いた一品。香り付けに我が家自慢の薔薇を香料として使っている。



「………凄いです、お嬢様………」


うっとりと私の髪を見ながら呟くターニャ。やっぱり、美容製品てどこの世界の人をも虜にしちゃうものね。


「……ターニャにも、あげましょうか?」


「え、そんな良いのですか?」


「作ればすぐにできますし」


始めの1つを作るのに時間がかかってしまったが、レシピが確立された今、そんなに時間はかからない。


「それでは、少しだけ………」


ターニャは嬉しそうに受け取った。…喜んでもえたなら嬉しい。ターニャには、本当にお世話になっているし。


けれども、話はそれだけで終わらなかった。私の髪を見た女性の使用人が、何か特別なものを使っているのか、使っているのであれば何処で手に入れているのか、とターニャに次々と詰問。ターニャは健気にも黙っていたけれども、それを目撃した私があっさりとリンスの正体を明かすと、次々と欲しいという声があがった。

その効果を知ると、男性陣が“これは商売になりますよ”と提言。それによりアズータ商会で早速製品化を進め始めた。

これにより、私の仕事が更に増えたのは言うまでもない。
















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