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お茶会

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部屋を出て歩き、短くない時間歩いてサロンに到着すると、椅子に座った。

それから待つことなく、ターニャが淹れてくれたお茶が目の前に置かれる。


「ん……美味しいわ」


「恐れ入ります。私は、一旦失礼させていただきますが、何かございましたあちらに控えている者にお伝えください」


「ええ、ありがとう」


彼女が足音一つ立てずこの部屋から去った後に、詰めていた息を吐いて再び深く息を吸う。

吸った際に、ハーブティーの香りが鼻腔を擽った。


……ああ、落ち着く。

……ターニャから、ヴァンの死刑宣告を聞いたあの瞬間。

感情が入り混じって、さながら様々な色を無作為に混ぜ合わせて醜い色となったような、何とも形容し難いドロリとしたそれが胸を過ぎった。

だというのに、頭の中は妙に冷めていたのだから不思議なものだ。


それも、ここで一息つけば心落ち着く程度の一過性のものだったみたいだが。


周りの花々や緑に目を向ければ、疲れていた目が少し癒された。


書類を見ているときには意識しないのだけれども、こうして緑を見ると目が疲れていることを自覚する。


視力が落ちない様に気をつけないと……この世界には、コンタクトレンズなんてないのだから。


なんて思いつつ、今見える景色を堪能していた。


アルメリア公爵家には、勿論専属の庭師がいる。

この景色は彼らが緻密に計算し作り上げ、そしてその美しさを保全してくれているものだ。

身近でこんなにも美しい景色を見ることができるのは、なんてありがたいことだろうか。


……そういえば、とぼんやりついでに思考の波に飲まれる。

随分前にミモザから手紙がきていたっけ。

なんでも、婚約前提でお付き合いしている方ができたとか。

情勢を気にして中々踏み出さなかった彼女だけれども、やはり恋の力は凄いというべきか恐ろしいというべきか。


一応お祝いの言葉と共にどんな方なのか教えてという手紙を書いたけれども、その後返事がきていない。


ボルディックファミリーのことで慌ただしかったから、特にその後何もしていなかったけれども……もう一度、手紙を書いてみようかしら。

そんなことを考えていたら、ふと視界にディダの姿が入った。


「……あら、ディダ」


「よう、姫様。……休憩中?」


「ええ、そうよ」


「そっか、じゃあ、後でセバスさんに書類を渡しておくから、目を通しておいてくれ。内容は、警備隊の今後の運営についてだ。俺はこの後出るけど、ライルが帰ってくるから何かあったときにはライルに伝えてくれ」


「ええ、分かったわ。ディダはすぐに出るの?」


「いんや……今すぐって訳じゃあないけど」


「それならば、貴方も休憩がてらお茶を飲んで行かない?」


「じゃあ、お言葉に甘えて」


ディダはニヤリ笑って私の前に座った。

私が視線を向けると、言葉を出す前に側に控えていた侍女がカップを置いてお茶を注いだ。


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