裏話 参
そうしている内に、お母様が倒れた。
流行病だった。
薬で治る病だけれども、その薬はとても高くて手が出せなかった。
ちょうど、ディヴァンは本職の仕事の最中で相談できる相手もいなくて。
そうしてオロオロしている間に、お母様の具合はどんどん悪くなった。
ならば……と、私はディヴァンに聞いて知った男爵家を訪ねた。
もしかしたら、助けてくれるかもしれない……と。
けれどもお願いするどころか、門前払をくらって会えず仕舞い。
おまけに、そこから足がついてお母様を亡き者にしようと正妻が動いてしまった。
ギリギリのところでディヴァンが助けてくれたけれども、彼がいなかったらどうなっていたか分からない。
ディヴァンには、すごく怒られた。
少し考えれば、私の存在はトワイル国云々を抜きにしても、正妻にとって目障りなものだというのが分かるはずだと。
『でも、男爵家の当主は、私の父なんでしょう!?この現状を知ればきっと助けてくれると思ったのに』
そう叫んだ私に、ディヴァンは諭した。
夢を見るのは止めなさい、と。
真実に愛に目覚めたといって、お母様を見初めたにも関わらず、結局正妻と離婚できず。
お母様が姿を隠した後、探すこともせず。
お貴族様にとっては、単なる恋愛ゲーム。
その果てに産まれた私のことなど、露ほども気にしていないと。
……反論できなかった。
むしろ、納得した。
所詮、人と人との関わりなんて騙し騙されの化かし合い。
出し抜いたら、勝ち。
ディヴァンにそう教わってきたじゃないか。
恋も愛もその沿線上にあるというだけのこと。
惚れた方が、負け。
信じた方が、負け。
お母様は、負けたのだ。
……ああ、なんだ。
なんて、シンプルで分かり易い。
ならば私は、私の持てる培ったもの全てを使って戦おう。
戦って、出し抜いてやろう。
私を見下した街の人たちも、男爵家の面々も。
そして、この環境に私を置いたお母様も。
出し抜いて、見返して、見下してやる。
私はその時、そう誓った。
お母様の話を番外編として、連載を始めました。もしよろしければ、こちらもよろしくお願い致します。
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