裏話
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「……あーあ。やっぱり、ヴァン君もドルッセン君も使えなかったわね」
クスクス、と笑いが漏れた。
「元より、期待していなかったでしょう?成功すればラッキー程度でしょうか」
ディヴァンの言葉に、私は頷いた。
「そうね。今回の件は、ただの嫌がらせだもの。……彼女への、ね」
計画は至って順調に、進んでいるのだし。
その間の、暇潰し。
彼女の慌てる様を想像することができて、とても楽しかったわ。
「恐ろしい方だ。貴方の遊戯に、幾つかの家が降格ないし、当主の蟄居の上家督交代劇が起こったのですから」
「あら、私は親切よ。だってあの方々は、そもそも教皇との関与が囁かれていたのだもの。遅かれ早かれこうなっていたわ。私はその前に、最後の起死回生のチャンスをあげただけ。……もっとも、失敗したところで元々エルリア様一派から切り捨てられていた存在だから、痛くも痒くもないけど」
私の言葉に、今度はディヴァンが盛大に笑った。
「残念なのは、ヴァン君とドルッセン君ね。もう少し楽しませてくれると思ったのだけど……やっぱり、お坊ちゃんはダメね」
本当は、ヴァン君についてはもっと素敵な花道を用意していたのだけれども。
思ったよりもあの女の手の者の監視が鋭くて、諦めざるを得なかった。
それが悔しくて、意趣返しをしたのが今回の出来事。
「おや、手厳しい。てっきり、貴方のお母様のように……」
「お母様の話はしないで、と何度言えば分かるのかしら」
「……これはこれは、失礼しました。ですが、感謝するべきだと思いますよ。彼女がいたおかげで、貴女はここまで成長したのですから」
「ふふふ……なあに、それ。新しい冗談?」
「いえいえ、至極真っ当な感想ですよ。反面教師があっての、今の貴女でしょう」
ディヴァンの言葉に、私は少し考えた。
確かに、お母様は良い教師だった。……反面教師として。




