決着 弐
2/2
「……最後に、聞かせてくれないか」
「どうぞ」
「貴女は、騎士についてどう思う?」
「誇り高き、護国の兵士です。……もっとも、私が知る騎士は一人なので、誇りと傲慢を履き違えているのではないかと心配になってしまいますが」
看板を背負っているってそういうことなのよね。
たった一人の行いで、全体がそう見られてしまう。
私にとっては、ドルッセンが正にそうなのだ。
一人と全体を切り離そうとは思うけれども、どうしても疑いは残ってしまうのよ。
「……そうか」
そう言った彼の顔は、どこかスッキリとしていた。
「時間をいただいてしまって、申し訳ない。失礼させていただく」
そして、颯爽と出て行った。
「……彼が領地から出て行くまで、監視を緩めないで」
姿が見えなくなって、ターニャにそう指示を出す。
ターニャは心得たとばかりに頷くと、一礼して出て行った。
「どう、思う?」
私は、後ろに控えていた二人に問いかけた。
「あの者のことですか?」
ライルの問いかけに、私は頷いた。
「さあ……彼の思考は読めないので、何とも言えませんが……」
その前置きに、私は思わず笑ってしまう。
「……普通、同じ年の女の方が活躍していると知って、その方にコテンパンに言い負かされたら……男として黙っていられませんよ。腑甲斐なくて」
「あら、また何か仕掛けてくるのかしら」
「いいえ、そういうことではなく……成長する、ということですよ」
「成長ねえ……ま、ライルの言うことはもっともだけどよお……あの坊ちゃんのそれは想像がつかねえな」
ディタがケラケラと笑って言った。
その言葉に、私は全面的に肯定する。
「あら……彼でなければ、ディダもライルの言っていることに共感はできるのね」
「ええ。俺も昨日ガツンと言われたんで」
誰から、とは聞かない。
それはもう、分かりきっていることだし。
でも、そっか……ディダはそれで清々しい顔をしていたのね。
彼がどうなるかは想像ができないけれども……まあ、良い。
言いたいことは、言ってやった。
この上で、何かを仕掛けてくるのであれば……容赦は、しない。
なんて、実は今回既にカタベリア家にそれとなく圧力をかけているのだけど。
お母様が全面的に協力してくださっている。
血の気が引く……って実際その人の顔色を見たときに分かるものだけど、手紙でそれが目に浮かぶほど、相当な慌て様だった。
特に奥様……ドルッセンのお母様はね。
ドルーナ様……カタベリア家の当主は、随分落ち着いていらっしゃるようだったのだけれども。
何か考えでもあるのかしら?
まあ、良い。
彼がどうなろうとも。
……そもそも、今回の件では関わらせなかったから。
私が少し不快な思いをしただけ。
けれども、『彼』は違う。
「……さて、出かけるわよ」
私の言葉に、二人は頷いた。
「護衛を、よろしく頼むわね」
そんな二人に、私は微笑みかけた。
二人がまた、揃って私を守ってくれるという事実に。




