冒険 参
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「……参った。あんたが連れてくるからどんな女かと思いきや……良い女だなあ、ディーン」
「ああ、そうだろう?」
ディーンの同意に、胸がキュンとする。
だから、自重して。
「俺らはどんな綺麗な言葉で包もうが、所詮、ならず者だ。だけど、俺らだって俺らのルール、最後の超えちゃならねえ一線っていうのを理解している。……つまり、だ。貴女の期待に応えられなきゃ、名前が廃るってもんよ」
「……ならば、協力してくださる?貴方たちの力を、私に」
「おうともよ。むしろ、こっちが助けて貰う側だ」
取引、成立……ね。
顔には出さないが、うまく交渉ができたことに安堵の息を漏らす。
グラウスとのパイプもできたし、成果は上々。
とはいえ、まだ事は解決できていない。
ここからが、本当の本番。
「……なら、早速だけど。貴方たちの拠点を全部開示して」
私のお願いに、グラウスは頷いた。
「ならば、自分が」
それを見て、壁に立っていた男が近づいて地図を覗き込む。
そして、次々と場所を指差していった。
「……ここだわ」
「何故、そこだと?」
「ここの下を、工事中の下水道が通っているのよ。役人に協力を得ているなら利用することも可能でしょうね。ボルティックファミリーの皆さんが来る時に一時的にそこに品物を置いて隠したりだとか、自身が移動する時に利用することもできるわね」
「……なるほど」
「ついでに、お誂え向きに、ターニャが調べておいてくれた首謀者たちの根城もすぐそばなのよ、これが」
ココと指差して示せば、ディーンは納得したように頷いた。
「……どうしますか?このまま、行きます?」
「ええ……その前に、交番に寄ってターニャを迎えに行くわよ」
「畏まりました」
「場所は、教えたわ。……だから、貴方たちも動くわよね?」
「ああ。俺たちの手で片をつけてえからな。……だが、良いのかい?」
「ええ。貴方たちの顔を立てないとねえ。少なくとも、関与が囁かれているウチと違って、貴方たちは一部事実だものね。……その代わり、茶色の髪のディダという男だけは救出してね。まあ、貴方たちにどうこうすることはできないと思うけど……」
「ほう?」
「……それから、生半可なものじゃあダメよ?貴方たちの元仲間を庇い立てするような真似をしたら、私はすぐさま護衛たちを派遣するから」
「ははは……!そりゃ良いな。野郎ども、支度をしやがれい!」
グラウスの掛け声で、男たちは盛り上がりを見せた。
「それじゃ、私たちはお暇させてもらうわ」
「おうよ。今回の件が片付いたら、また来いよ!一杯やりたいもんだ」
「あら、素敵。楽しみにしているわ」
そして、私たちは急ぎ表通りに戻った。




