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大冒険 一番

1/3

それから、私はディーンと共に宿を抜け出した。

勿論、彼の助言通り動き易い格好に着替えて。


日が落ちた後の街並みは、昼のそれとは違う顔を見せている。

……それが裏通りなら、なおのこと。


「……こっちです」


ディーンに手を引かれ、私は走る。


「何だ、お前ら……ガッ」


途中絡んできた輩を、ディーンがのしつつ。

彼のことを強い強いとディダとライルは前に言っていたけれども、本当にそうだった。

今だとて……。


「……何だ、お前?」


「ちょっとばかりグラウスに会いたくてな」


「グラウスさんにだあ?」


「てめえ、何寝ぼけたこと言っているんだ?お前みたいな若造に、グラウスさんが時間を割くわけねえだろうが」


「お前の判断するところじゃないだろ?……隠れている奴らも、さっさと出てこいよ」


「……ちっ」


建物の陰から、何人もの男たちが更に現れた。


「こんなに歓迎してくれるとは、な。……それで、通してくれるのか?それとも……」


「通すわけねえだろっ!」


そうして、戦いが始まったのだけれども……圧倒的だった。


明らかに数で劣っているというのに、ものともしないディーン。

ディダやライルが戦っているときと同じような、動き。


城の騎士様たちや、公爵家の護衛隊の動きよりも生々しくて……けれども、目が離せない。


洗練された暴力というものは、こういうものなのかと思った。


僅か、数分。


それで、この場にいた者たちはディーン以外地に伏していた。


「行きますよ、お嬢様」


物陰に隠れていた私を回収して、ディーンは再び走り出す。


そうして辿り着いたのは、海に面した建物だった。


外観だけでいうなら、何ら他の建物と変わりない。

彼は再び私を物陰に隠れさせると、ビルへと走り出した。


そして、門番らしき男の意識を刈り取り気絶させると、すぐさま私のところに戻って来る。

そして、私の手を取って再び走り出した。


「………?」


静かに、けれども急いで私たちは階段を進む。


ファミリーの建物だからどれだけ人がいるのやら、と覚悟していたのだけれども……人っ子一人見当たらなくて驚いた。


一体、どこに?

けれども、その疑問もすぐに宙に放った。


何せ目的の場所に辿り着いたらしく、一瞬彼が扉の前で止まり……そしてそのままノブを捻ってそれを押したのだから。


勢いよく開く、扉。

それと同時に、剣が視界の外から彼に向けて飛び出してきた。


「キャ………っ!」


叫びそうになるのを、唇を噛んで堪える。

その間に、ディーンはその剣を自身のそれで受け止めて押し返し、そのまま剣を持つ男に叩き返した。


「やめい!」


ドサリと男が倒れるのと、野太い声がしたのはちょうど同時だった。


ワンフロア全てを一部屋にしているのか、だだっ広いこの部屋に響き渡るかのような、鋭くも大きな声。


視線をチラリとすべらせれば、それによって壁にいた幾人もの屈強な男たちが、動きを止めた。


「ククク……今日は、何てぇ日だ」


先ほど叫んだ、この部屋で唯一座っている男は、そう言って笑った。


「……久しぶりだな、グラウス」


ディーンはその男に対して、そう言いつつ息を吐く。


「おうよ、久しぶりだな。相変わらず騒ぎを起こしてくれやがって……テメ、いい加減にしろや」


フレンドリーそうな雰囲気から一変、男……グラウスはそう言って威圧してきた。


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