表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
133/265

調査の考察

5/5

「……ボルティックファミリーと敵対する者たち、ね……」


私は考えをまとめるために、呟く。


「彼らの狙いは、噂通り私か……もしくは、ディダ」


「ディダ、というのが濃厚では?貴女と敵対しても、ボルティックファミリーに勝利を収めた後に仕事がしにくくなるでしょうから」


「確かに、そうね。でも、噂通りなら私も……いいえ、そうか……」


「はい。おそらく、今回の件を知って利用しようと動いている輩がいるということでしょうね。お嬢様もそれを懸念されて、ヴァンの見張りを強化したのでしょう」


ディーンの言葉に、私は苦笑いを浮かべた。

そしてそのまま続けるべく、私は再び口を開く。


「ボルティックファミリーのナンバー2が何を思って、敵対している組織と手を組んだのかはわからないけれども、彼はボルティックファミリーの名を使って、事に当たっている。恐らく押収された品はボルティックファミリーの場所に隠されている。ボルティックファミリー自体が私の味方かどうかは、謎。けれども、調査に乗り出しているということは……」


「恐らく、表立ってアルメニア公爵家と敵対したくないのでしょう。できれば、押収した品を早急に吐き出し、秘密裏に事を収めたいのかと」


「さっさとそれをやってくれれば良いのに」


「ボルティックファミリー内でも、誰がどちらの派閥かというのが掴みきれていないのでは?」


「ああ、なるほど。つまり、捜査網自体混乱している……と。あるいは、泳がせている……か」


「ええ。その時点でナンバー1にしては、ありえない失態ですけど」


「……ディーン。地図を持ってきて」


気が急いてばかりいる心を落ち着けるために、私は深く息を吸って吐いた。


「……とはいえ、私が護衛隊たちを動かさずとも、このままドルッセンが動いてしまったら、結局のところディダは危ない。彼はあれでも騎士だからね。それも、正義感に溢れる騎士様。……他領の問題は干渉になるから、あまり積極的に首を突っ込まないものだけど……彼は思いっきりやりそうだものね」


騎士は、あくまで王族と王都の守護。


その権限はあっても、由緒正しい貴族の子弟が騎士団に入団するので、他領の問題に首を突っ込んでしまえば実家の利害関係故の行動と邪推されては堪らないので、積極的にはそうしない。


何よりそれは、軍部の領分だ。

けれども、ドルッセンなら思いっきり首を突っ込むだろう。


私を学園から追い出したときのまま、何も変わらず、成長もしていないのなら……恐らく、後先を考えずに。


「こちらです。……どうぞ」


ざっと、ディーンが持ってきてくれた地図を見る。

同時に、自分の中にある情報を照らし合わせ、整理をした。


「ディーン。貴方、ボルティックファミリーの本拠地知っているんじゃない?」


「……どうして、そうだと?」


「なんとなく……じゃ、ダメかしら」


言いかけた途中で、彼の表情が真剣というよりも強張ったそれになっていることに気がついて、肩をすくめる。


「……別に、どうこう言うつもりはないわ。今回の調査で知ったのかもしれないし、元々商家の人間として幅広い人脈を持っていたのかもしれない。いずれにせよ、貴方はナンバー1を知っていると思ったの。ナンバー1にしては、ありえない失態なのでしょう?」


「さっきの……」


「……とはいえ、半分以上勘だけどね」


そう言って笑ったら、彼は困ったように笑った。


「ええ、知ってますよ。とはいえ、勿論組織とは関わりがありませんから、組織の構成員全てを知っているわけじゃありませんが」


「貴方って、本当に謎だらけの人ね」


視線を彼にむけながら、囁くように呟いた。


「信用できないと、思いますか?こんな怪しい私では」


彼もまた、問いかけつつ私に視線をよこす。

言葉だけではなく、その視線そのものでも私の真意を問うているようだった。


「不思議と、そう思わないのよね。領主代行としては失格かもしれないわね」


私は、苦笑する。


座っている私に、彼は視線を合わせるようにしゃがんだ。

さっきよりも近くなった私と彼の間。

そのことに、勝手に胸が高鳴る。

ああ、もう。こんな時なんだから、自重しなさい!と自分で自分を叱咤する。


「失格じゃないですよ」


「そうかしら?」


「ええ。貴女は、私を利用してください。貴女になら、良い。私は貴女に全てを捧げると誓ったのだから。私は、役に立つでしょう?」


「……そうね。そうだったわね」


彼が少しだけ戯けたように言った言葉に、私は笑った。


「ならば、ディーン。私に力を貸して」


「仰せの通りに、お嬢様。まずは、何を望みますか?」


「ボルティックファミリーのナンバー1に会いたい。今から行って、会えるかしら?」


「彼らの根城に行けば、恐らく」


「ならば、ディーン。私を連れて行って。早く行かなきゃ……ディダを、助けなくちゃ」


「それは、どうしても?」


「ええ、そうよ。こうしている間にも、ディダに危機が迫っているかもしれない。ドルッセンが動き出しているかもしれない。……行動を躊躇う理由が、ある?」


おまけに、目的の一つであったボルティックファミリーに接触ができるかもしれないのだし。


「畏まりました。ですが、お嬢様」


「何かしら?」


「もう少し、動き易い格好にしましょう」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ドルッセンが後先を考えずに?殴ってから理由をこじつけるタイプだった気がするw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ