調査の確認
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「ターニャ。この人、探っておいて。今回の件に関与している可能性があるわ」
「畏まりました。すぐに調べます」
「ええ、お願い。ディーンの方は?」
「お嬢様が指摘した方とは別に、二人。後は色々気づいた点はありますが、今回の件には関係ないと思いますので後ほど報告書にまとめて提出します。因みに、お嬢様は何故この者が怪しいと?」
役場での経緯を伝えると、ターニャは驚いたように目を丸めていた。
「お嬢様にそのようなことを……」
「元々自分が言い出したことだし、ね。何より、それで手がかりが掴めたから無駄ではなかったしね」
「確かにそうですね。この者は、私の調査では挙がっていませんでしたから。……これより、この三名の背後関係等を調べます」
「お願いね」
「畏まりました」
「それで、ターニャ。貴女は今日調べて何か分かった?」
「やはり今回の件は、ボルティックファミリーの仕業ではないようです。いえ、正確には……ボルティックファミリーも関わっていますが、首謀者ではないと」
「……どういうことかしら?」
「事前に調べたボルティックファミリーの印象から、彼らが今回のような件を起こすのには違和感を感じると私も思っていました。それで、昨日ディーンが目撃したボルティックファミリーを名乗る者たちを調べたところ……」
「ボルティックファミリーには在籍していない、と?」
「はい。ボルティックファミリーではなく、彼らと敵対している組織でした」
「……なるほど、ね」
「ですが、彼らが接触していた人物の中にボルティックファミリーに在籍している者がおりました。ボルティックファミリーのナンバー2の、エミリオです。ですので、ボルティックファミリーが全く無関係ということではなさそうです」
「ボルティックファミリーがそれを把握しているのか、それともエミリオという男が勝手に動いているのか……」
「……おそらく、後者の可能性が高いと思われます。ボルティックファミリーの者たちの一部が、調査に乗り出していましたから」
「そう。……それから、ターニャ。貴女、ディダのことで何か分かったことはある?」
「それが……」
珍しく言い淀む彼女に、私は言葉の続きを促した。
「現在どこで何をしているのか、全く分からないのです。……以前聞いた話から推測するに、彼は恐らく今回の件の首謀者たちの組織に所属していたと思われます。だからこそ、彼もここまで分かっているのだと思いますが……」
「ディダが……」
「お嬢様。護衛隊を、動かしますか?」
ターニャの問いかけに、私は首を横に振った。
「駄目よ。ライルの報告次第だけど、この地域の護衛隊は今は信用できない。領都の護衛隊を招集してしまったら……」
「事が大きくなってしまう、ですか?」
「ええ、そう。ディダが仮に捕まっていて、傍目に見てそうと分かる様子なら良い。けれども、もしまだ捕まっていなくて、彼らの後を追っているところだったら?もしくは、単に監禁されているだけで危害を加えられていなかったら?ただ、彼らと共にいるだけのように映ってしまう。そこを、大勢の護衛たちに目撃されてしまえば?……彼を、庇いきれなくなる」
「……出過ぎた発言、失礼しました」
「いいえ……貴女の言う通り、早く動かないと……」
「……お嬢様、今から少し出てきて大丈夫ですか?」
「ええ、良いけど?」
「ライルのところに行って参ります。護衛隊を見張る必要があると判断した場合、こちらに戻れないかもしれないから来て報告を伝言で伝えて欲しい、と言われておりまして」
ディダのことで何か動くのかと思ったから、一瞬驚いた。
けれども、彼女の申し出に否やはない。
「そういうことなら、勿論許可するわ」
「お嬢様の護衛は任せてください」
ターニャは私が独り宿に残るという状況を懸念していたみたいで、それを聞いて安心したように出て行った。
何だか知らない間にディーンへの信頼度が増しているわね。




