ディーンとの再会
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お待たせいたしました。
1ヶ月間で書き溜めていたものを更新していきます。
「さて、これで終わり……っと」
カリカリカリ……筆を走らせて、サインをした。
これで今日の分は、終わりだ。
「やっぱり蟄居していた人たちに戻ってきてもらえて良かったわー。随分仕事が減ったもの」
行儀は悪いけれども、机に突っ伏す。
頭が重いわ。
「お疲れ様です、お嬢様」
ターニャはクスリと笑いつつ、お茶を淹れて机に置いてくれた。
「失礼します」
ノックと共に現れたのは、ディーンだった。
「ディーン!」
わたわたと、私は手ぐしで髪を整える。
本当に、いつも唐突に来るんだから……!
「お久しぶりです、お嬢様」
「え、ええ。本当に」
彼がレティと共にいるタイミングで会って以来……か。
あの時は、レティが妹と知らず、こっちの気持ちも知らずにとイライラしてしまって……よくよく考えれば、八つ当たりもいいところだった。
だって、私には彼を縛り付ける権利なんてない。
契約をしていない時は、赤の他人……とまでは言わないけれども、ただの知人。
私が大変な時に、何楽しそうに遊んでいるんだ……なんて、どの口が言うのだか。
いや、これ以上考えるのは止めよう。
あまり考えすぎると、あの時のレティに対する大人気ない反応を思い出して、穴があったら入りたくなっちゃうから。
「申し訳ありません。貴女が一番忙しい時に、こちらに来ることができなくて」
「良いのよ。貴方にも、色々事情があるでしょうし」
そう言いつつ、私はディーンに席を勧める。
ターニャは既に彼の分のお茶を準備していた。
それから、私はここ最近領で起きた出来事の話をする。
愚痴めいた話もしてしまったけれど、ディーンは少しも嫌そうな顔をせず、相槌を打って聴き続けてくれた。
「それで貴女はそれ以来、街には訪れたのですか?」
「え……いいえ。行きたいと思ってはいるのだけれども」
中々踏ん切りがつかない。
ミナは、ああ言ってくれたけれども……ねえ?
いざ行くとなると、尻込みしてしまうのよ。
まあ、現実的に言えば仕事が溜まりすぎてというのもあるのだけど。
「行きたいと、思っているのですね?」
彼の確認に、私は首を縦に振った。
「ならば、私も全力を出します。貴女のことですから、少しでも仕事が残っていればそれを理由に行かないでしょうし」
「うっ……」
ニコニコと言われた言葉は、けれども見事に私の心に刺さった。
図星すぎて。
「という訳で、仕事に一区切りがついたら行って来てください。きっと行かなければ、貴女もずっと気にしてしまうと思いますよ」
「……そうね。確かに、その通りだわ」
きっと後回しにし続ければ、それだけどんどん行き難くなって、気持ちだけが膨らんで。
……そうして、ズルズルと引きずり続けるのだろう。
「次に目処がたったら、行くわ。……ディーン、協力してくれる?」
「勿論です」
ディーンはニコリと笑って了承してくれた。
さて、頑張るぞ。




