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招かざる客人

この度、公爵令嬢の嗜みが漫画化になりました。漫画連載はネットでされています。https://web-ace.jp/youngaceup/contents/1000012/

これもお読みいただいている方々のおかげです。本当に、ありがとうございます。


「……お嬢様。そろそろ……」


ターニャが申し訳なさそうに、時間を告げる。……楽しい時間は本当にあっという間ね。


「まあ……アイリス様。長い間、お引き止めしてしまい、申し訳ありません。是非、また王都にいらっしゃった時にはお知らせください」


「ええ、勿論。今日は早速、貴女に教えて貰ったところに行ってみるわ」


話している途中、レティには今王都で流行のお店を幾つか教えて貰った。ということで、お土産を探す為に、これから行ってみようかと。


「はい。良い土産が見つかると良いですね」


「ありがとう。……ディーン。また、領に来てくれるのを待っているわ」


「はい。私も、諸々の業務が終わったら、むかいますので」


「ええ」


それから、私は店を出て土産を求めて歩く。


明日には王都を出るから、今日中に買ってしまわないとね。


結局、レティお勧めの小物屋さんでメリダとセイにはハンカチーフを。

そして、他の皆には当初の予定通り甘味を買って帰った。


帰りの馬車の中で、良い物を買えたと満足な気持ちに浸りつつ屋敷の前まで来たら、突然目の前に人影が現れて寄ってきた。


「アイリス様……!」


そう叫びながら寄ってくる、その人物。


すぐに、ライルとディダがその人物と私の間に私を守るように立つ。


「ああ、会いたかった……。アイリス様、話を聞いてくれ」


その人物は、私のよく見知った人物だった。


「ヴァン様………。何故、貴方がここに……」


私がその名を呼ぶと、ライルとディダの警戒心が高まった。


ターニャは一度屋敷に押しかけた彼の対応をしているため、始めっから不快そうな表情を浮かべていたが。


「何故も何も……一度、会って話したいことがあったからさ。この前は、屋敷にいないからと言われてしまって帰ったけれども、今日は君のことを待っていたんだよ」


「……だからと言って……無礼が過ぎます!約束もなく、こうして押しかけるなんて……!貴方は、アルメニア公爵家を軽んじているのですか!」


ヴァンの言葉に、ターニャが激昂した。

ライルもディダも怒鳴らないだけで、全く同じことを思っていたらしい。明らかに、不快そうにしていた。


「……良いわ。ヴァン様、ここでは何ですから屋敷にお入りください」


「アイリス様……!」


「……こんな往来で、これ以上の騒ぎはごめんよ。ヴァン様、話を聞きますから、さっさと中に入ってください」


失礼な物言いだと自覚していたが、生憎このような押しかけに対して礼儀を重んじるほど私も優しくはない。



重い溜息を吐きつつ、私は屋敷の中に入った。


「……随分物々しいね」


席についてヴァンの第一声はそれだった。


屋敷の中では、ヴァンの姿に皆が警戒心と敵対心をもって迎え入れていた。……勿論、それを表立って出すほど、アルメニア公爵家の使用人は感情的ではないが。


この室内での対面も、ライルとディダそれからターニャが私を守るように控えている。


「……ご自分が、歓迎されるとでも?」


「いや、失言だったね」


「それで、ご用件は?……私、明日には領地に帰らせていただきますの。ですから手短に、お願い致しますわ」


「……君に、頼みたいことがあるんだ」


「何でしょう?」


手短にとは言ったが、駆け引きの“か”の字もないその性急さに私は驚く。


それ以前に、“私”に対してお願いをするなんて、ね。私の側に控える3人からは、今にも飛びかかりそうなほどの殺意を感じる。


「僕の後見になって欲しいんだ」


「まあ………」


想像がついたけれども、まさか本当に言ってくるとは思わなかった……そんな類の言葉が、彼の口から発せられた。


「今回の件で、君にも迷惑を掛けておきながらこんな頼みをするのは厚かましいことだが……今、僕は非常に厳しい立場に立たされている。そして、それと同時にダリル教も混乱の真っ只中だ。……このままでは、ダリル教の波乱が、王国にも波及するかもしれない。だからこそ、この混乱を招いた父の息子である僕が、今回の一件の被害者である君と協力関係にあると内外に示すことができれば……これ以上ない抑止力になると思うんだ」


確かに彼の言う通り、現在ダリル教は波紋騒ぎの後の教皇の粛清及びその一派に対する責任追及で揺れに揺れていることは事実だ。


そして、それと同時に教皇やその一派と癒着のあった貴族の面々に対する調査も進んでいると聞く。……とはいえ、その貴族たちは所謂(いわゆる)蜥蜴の尻尾……小物たちばかりで、本当に責任追及をしなければならない面々にまで及んでいないらしいが。


「……確かに、ダリル教の混乱は王国にも害がありましょう」


「なら……」


期待を持った目で、私を見つめる。


けれども、おあいにく様。


「……ですが、私が貴方と協力したとして。それに対する私のメリットは何でしょうか?」



私は、続けて勤めて冷たい声でそう問いかけた。



番外編集を追加しました。

http://ncode.syosetu.com/n7919da/

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― 新着の感想 ―
王宮に深く絡んでいる時点で政教分離が出来ていないのだから、 教皇という地位そのものを世襲制にしないで根競べもとい コンクラーベの様な選挙制にするか、 そもそも教皇そのものを廃止しちゃうのが一番のメリッ…
[良い点] 全体的にほんとに楽しく読ませていただいています!! [気になる点] 最後の「勤めて冷たい声で」というところはおそらく「努めて」のほうが適切かと、、、、
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