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ディダの不満

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「……だからさ、師匠。何で俺らが付き合わないといけないわけ?」


不満を隠さず、師匠に言った。


ライルは珍しく、俺の態度に何も言わない。


まあ正直なところ、師匠にはお世話になっているし、今日はお嬢様も出かける用事はない……ターニャもいることだし、大丈夫だから良いと言えば良いのだけど。


「まあ、そう言うなて。儂とて、さっさと騒がしい王都を離れて領地でゆっくりしたいわ!」


師匠は、現役の将軍だ。


けれどもそれは、英雄として名誉職の意味合いも兼ねて与えられている。


本来なら、引退していてもおかしくない年齢だ。……とはいえ、今のところ師匠を超える武人は見たことがないが。


年を経て力が弱まった分、より技巧が磨かれている。


そもそも弱まったとはいえ、未だに手合わせでライルと競り合うことができるのだから、普通の老人と同じに考えてはいけない。


ライルと競り合うことができる人物なんて、軍部・騎士団合わせても片手ほどの数の人数だ。


つまり、師匠の力は弱くなったとはいえ、衰えたと言うほどではないのだ。


閑話休題。


師匠の現在の主な仕事と言えば、実はそこまで実務は行っていない。大規模な争いが、近年ないということもあるが……。


あえて言うなら、軍部・騎士団双方の仲を取り持つことと後進の育成というところか。


そういった背景があるため、基本、師匠将軍という位に対して驚くほど自由に行動している。


自身の領地にいることもあれば、ついこの前はアルメニア侯爵領にいた。たまに国境に視察に行っているが、あれは半ばフラフラとしたいという自身の願望で動いているだけ。


ただ、王宮にいることは少ない。


固っ苦しいのは嫌いだ、と常々言っている師匠らしいが。


そんな師匠が、ここ最近ずっと王都の……それも王宮に通い詰めている。


その理由は、軍解体の案が出たからに他ならない。


「……師匠。上の動向はどうですか?」


「ん……今は大人しくしておる。じゃが、儂らがいなくなったら、分からん」


師匠は苦虫を潰したかのような顔をしていた。


……師匠の存在は、各領主も王宮で勤めている者たちも無視できないものだ。


それだけの実績を築き上げ、民衆からの人気も高い。


師匠がいるだけで、プレッシャーをかけることができる。


それ故、師匠は王宮に顔を出してはおかしな動きがないか常に見張っているのだ。


「儂とて、好き好んで戦争をしたい訳ではない。だが、丸腰でおれるほど平和ボケしたつもりもない。軍という壁がなくなったら、この国を一体誰が守るというのか。それが、エドワード様の陣営の方々には見えておらん。……国がなくなれば、混乱が生まれ、やがては領地に引きこもっているだけでも、それに飲み込まれてしまうかもしれんという危険性を、あの会議で賛成した日和見主義の貴族どもは分かっておらん。いや、軽く見ている……か」


「姫様は既に争いも視野に入れてるよ、師匠」


「そうか……」


俺の言葉に、少し悲しそうに笑った。


「……儂という老いぼれの存在で、少しでも抑止力となるのであれば。あの子の覚悟が杞憂に終わるように気張らねばな」


「……まあ、姫様のためなら仕方ないか」


「何を言うておる。お主らは、楔となるほど顔が広くないだろう……儂の鬱憤晴らしに付き合ってもらうだけじゃ」


「ええ、師匠……やる気なくしたわー」


「こら、ディダ。……それが巡り巡ってお嬢様のためになるというのなら、我らは力を尽くしましょう。勿論、お嬢様の護衛が一番ですが」


しょうがないな……と呟きつつ、俺はライルと共に師匠の後について歩いて行った。



人物紹介

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