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会議は踊らない

さて、あっという間に3日は過ぎ、約束通りモネダはウチの門を叩いた。と言うわけで、第一回会議の開催。まずは私の考えを内輪に理解してもらわなきゃね。


「今日は皆さん、集まってくれてありがとう。第一回会議を始めます」


とはいえ、今いるのは私が信用を置ける人たち……つまり、視察に一緒に行ったメンバーとモネダ、セバス、それからセイ。セイはやっぱり子どものときに私が連れてきたメンバーで、今はセバスについて館の管理と領の実務を行っている。


「……まず、私の考えを述べさせて貰うわ。ここ1ヶ月領内を周り、セバスから事実確認もさせてもらったけれども…我が領は他の領に比べ、豊か」


これは、本当にそう。王都より南部にある常春の我が領は農耕も盛んだし、海にも面しているから交易も行っている。この国第二の首都と呼ばれているのも、あながち間違いではないと思う。


「けれども、私が実際見て感じたのは……この領は、熟れた果実のようです。今は食べ頃ですが、やがて腐り朽ちていく。そのように感じました」


周りは予想していなかったのか、私の感想に目をパチクリさせていた。特にセバスとセイはね。


「……富める者に富が集中し、貧する者は這い上がれず。真新しい商品のない店先、停滞した空気」


日本という資本主義の国で暮らしていた私は競争社会には肯定派だし、富がある程度集中するのも仕方ないと思っているのよ。けれども、この領は違う。そもそも競争すらできない。


上は余程下手を打たなければ上のままだし、下は這い上がる機会すらない。


「民が富まなければ、領が富むことはありません」


そういうことなのよ。限られた市場では、やがて衰退してしまう。つまり、民を富ませることで経済を活性化させなければこのままやがては流れで我が領も衰退してしまうと思ったわけよ。


ふと、周りを見渡せば、何人かはハテナマークが飛んでいた。


「……つまりね。分かり易く言うと、昔の貴方達のような境遇の子どもを、作らないような領にしたいのよ」


納得が言ったのか、皆が笑みを浮かべながら頷いた。


「大きな目標は、そんなところ。100年先も我が領を発展させることができるよう、まずは民の生活の質を向上させること。その為に、幾つかの改革を推し進めます。まずは我が公爵家とこの領運営の資金の財布を明確に分けること。それから銀行の設立と政務の集中化、税制改正、街道の整備、義務教育……」



「……あ、あの。ギンコウとは何ですか?」


私が話している最中に、恐る恐るといった程でセイが口を挟んだ。


「あら、失礼。つい熱中し過ぎて、話を端折り過ぎたわね。銀行については、セバスとセイそれからモネダに携わって貰おうと思っているから、後でみっちりその構想について話すわ。……ただそれも、まずは我が家が領民の税に頼らずとも生活を維持できるような体制にしなければ実現できないのだけれども」


「つまり、貴方は領民からの税はあくまで領の運営に使うべきであり、公爵家の維持は別のところから資金を調達したいと?」


「そうよ、モネダ」


「具体的には、どうするつもりですか?」


「まず、商売を始めるわ」


私のその一言に、一瞬会議の空気が凍った。











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