13
ね、眠い・・・。
翌朝目が覚めるとジャックさんは既に起きていて、朝食の準備をしているところだった。
「おはようございます。朝食は私の番でしたのに」
「良いんだよ。お茶が飲みたかったからついでだ」
お茶のついでに朝食を作る事はありませんよ~。でもありがたや~。
「ありがとうございます」
「どういたしまして。これを食べたら早速出発しようか」
「はい」
せっかち、とは思わない。魔物が出る外を長い間うろつく事は命にもかかわるからね。私達はリトルドラゴンがいるから大丈夫だけど。
そんなこんなでこの日も昨日と似たような流れになり、次の街についたのは翌日の昼頃。今まで見てきた村とは違って、高い防壁に囲まれた立派な街だった。
「・・・なんか一気に変わりますね」
この一つ前が辺境の村であるエレン村と同等の規模であるライガ村だった。この差はなんだ~。
「まあこの辺り一帯を治める領主が住んでいるし、貴族もいる事はいるからねぇ。厳重にしないと魔物に襲われた時が大変だよ」
ごもっとも。
防壁の各所に作られている門では外から入ってくる者の身分証明などを確認して通している兵士さんがいる。ジャックさんとは顔見知りらしく、笑いながら挨拶を交わしていた。
「彼女は今度王都に店を出すんだ。辺境の村から来たから身分証明書がない。そういう場合はお金を払うんだったね」
「はい。銀貨10枚になります。中で身分証明書の交付をされるならジャックさんが後見人ですね。ギルドで登録をしてカードを作っても構いません。その場合は後見人は必要ないですが」
「ありがとう」
詳しく説明を聞き、ジャックさんは銀貨を払ってくれた。私のせいなんだから私が払います、って言いたいところだけど、さすがにそこまで手持ちは・・・。世知辛いわ~。
許可が出たのでリトルドラゴンを進ませるジャックさん。荷台から顔を出し、丁寧に対応してくれた兵士さんにぺこりと頭を下げつつ、くぐった先の街を見回した。
「ふわ~」
ちゃんと道が整えられて石が敷き詰められており(大通り)、馬車が走っても振動はないだろうと思わせる広い道がまっすぐ続いている。その左右にはたくさんの屋台が並んで、店主さん達が大きな声を張り上げて客寄せをしていた。
「この辺りの光景は王都にもある。王都の方が規模はさらに大きいけどね」
この光景より更に大きいとな? 屋台の食べ物全部食べられるかしら(おい)。
「まずは宿をとって、食料や消耗品などを買い込んでこよう。昼食はその後で良いかい?」
「構いませんよ。どこの宿に行くんですか?」
「私が贔屓にしている宿だよ。あそこを曲がって少し進むと・・・ついた」
大通りからいくつか曲がって進んだ先に、ベッドの絵が描かれた看板が見えた。どうやらここらしい。
出てきたのはジャックさんと同じくらいの年齢の男性。彼はジャックさんを見ると満面の笑顔で手を振ってきた。
「よう。今回は戻るのが早えな。行商は行ってねえのか?」
「ああ。ちょっとした用事でな」
言いながらチラリと私を見るジャックさん。な、なんでせう。
「彼女はうちの大事な従業員だ。誰も手を出さないように」
「ほう。お前がそんな事を言うなんてな。よっぽどお気に入りか」
「良いから仕事しろ」
「へいへい」
ジロリと睨まれて男性が苦笑する。だが気分を害したわけじゃなさそうだ。そこに二人の付き合いの長さがうかがえる。
受付を済ませて用意された部屋に入ると、ライガ村で泊まった部屋よりも若干広かった。しかもっ、ベッドが柔らかい! もしかして羽毛が入っているタイプですか!?
興奮しすぎてベッドにダイブしたのは言うまでもない。