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帰命 1  作者: 金色の車
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1無題のコーンスープ

1無題のコーンスープ


俺はいつものように重い体を起こして眼鏡をかける。そして、テレビをつけた。

「冬型の気圧配置が続き、北陸地方を中心に28日朝にかけて断続的に降雪が強まる見込みで、気象庁は引き続き…」

半分寝ぼけながらトースターをいじる。ここまではいつもと同じだった。問題はここからだ。俺は自分の目を疑った…


「故郷を離れ今都会にいるその男は、まるでほっぺたの赤い子供が寒さは嫌がるくせに雪を待ちわびているように、一人暮らしがしたかった。別にこれといってしたいこともなかった。ただそれだけの理由で、それらしい理由を探し生まれた場所から離れた大学を選んだ。勉強はそれなりにできた、理由はどうにせよ国公立大学だ、だから親もその男がそういう人間であることと進路の妥当すぎる理由付けの違和感に勘付いているに違いなかったが文句など到底言うはずがなかった。その男は親に悪いとも思っていない、学費や家賃は払って貰ってるが自分の息子の自慢話をしているし、その男はきちんと働くようになったら少しくらいは親孝行もしようと決めている、それでおあいこだ。…」どうだ?これお前みたいじゃないか。大学で知り合った岳が古びた小説を持ってニヤニヤしながら言ってきた、こいつはめんどくさいヤツだ出来れば関わりたくないタイプだ。俺の何を知ってるんだコイツはと思ったが俺もその話を聞きながら内心は俺のことを言っているんじゃないかと思った、岳はその小説を俺に持たせてどこかに去って行った。その夜、布団につき部屋が暖かくなるまでの時間潰しにその本を読んだ……気がする。内容は全く覚えていない。急に今日になったのだ。昨日とは違う世界の今日だ。俺が世界の違いにまず、気づいたのはTVだ。いつものように不景気や芸能人のくだらない恋愛、俺の知らない誰かの死などは報じられていない。ただ、天気予報が繰り返されている。どの局もだ。俺は慌てて新聞を手にとる起きてから二三度みた天気予報が書かれているだけだった。俺は慌てて着替えて外に出た。別に昨日と何ら変わりない。俺は少し安心して少しつまらなく感じた。でも、すぐにその時の感情は吹き飛んだ。いつもの商店街でがきが喧嘩していた、本物の銃撃戦は始めてだった。俺は力が抜けその場に倒れこんでしまった、すぐに冷静になり警察に連絡しようとした。だが、携帯はガラクタ同然だった、何者かによって液晶画面が砕かれていてボタンも1と0がなくなっていた。そこに一人の老人が通りかかった。俺はその老人を引き止めた。そしてすぐに警察を呼んでくださいと言った。その老人は笑いながらスキップしてどこかに行ってしまった。俺は物凄い恐怖にかられた。その場を離れ沢山の奇妙なモノを見たが見ないフリをして大学に向かった。あの小説が何か関係しているかもしれないと思ったのだ、だから岳の元へ。岳はいつものように外のベンチで居眠りをしていた。叩き起こして今まで起こったことを話す、すると岳は笑いながら俺に、「どう?僕の作った世界は。」なんてどこかの安いSF映画みたいなことを口にした。さらに続けて言った「この世界はみんな幸せなんだぜ?何もかもが自由なんだ。法律も勿論ないし、警察だっていない。だから、悪がないんだよ。この世界の誰も悪を知らない。悪という概念すらないんだ。僕らがもといた世界のきまりはどうせどこかのお偉いさんが自分を守るためか比較的多くの人の生命維持の為のものだろ。そんなくだらないもの世界にはいらないんだ。」俺はコーンスープの最後のコーンを無理やりだすように缶の口を岳に向て底を叩いた「何言ってるんだ?わけわかんない。」岳は笑いながら言った「おいおいでいいだろ?戦争が起こるよ。君はもう帰ったほうがいい。」


俺は目覚めた。特に何も変わらぬ朝だ。変わったといえばその奇妙な夢の後から岳がいなくなったことくらいだ。

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