S・O・S~06~
テスト終わった~。でも絶望的だ~。
僕のテスト結果は、真っ黒ですが、七話目始まります。
〜Mikuルート〜
−Miku−
私は逃げるようにして洗面所に駆け込んだ。
「はぁ、はぁ…」
すごく恥ずかしかった…。胸の鼓動が止まらない。私は今凄いドキドキしている。
なんで雄介さんを前にするとこんなにドキドキするのだろう?
それは、初めて雄介さんに会った時から感じていた。初対面なのに、顔を見た途端に胸がドキドキした。
最初は、好奇心かなんかでドキドキしているだけで、いつか収まると思っていた。でも、そのドキドキは収まるどころか、日に日に増してきている。
私はどうしてしまったのだろう?こんな感情になるのは初めてである。この胸を締め付ける感覚は、何なのだろう?
私はふと洗面台の鏡に目をやった。頬は、赤みを帯びており、自分で言うのも難だが、今まで見たことが無いくらい可愛らしい顔をしていた。
「何なのよ…、もぅ…」
このドキドキは、どうやったら収まるのだろう?
そんな事を考えていたら、不意に洗面所のドアが開いた。
「Miku、さっき顔赤かったけど、大丈夫?」
そう言ってエプロン姿の雄介さんが入ってきた。
「うひゃあ!!」
突然の事に私は今まで出したことが無いくらいの声をあげてしまった。
「うわっ!ど、どうしたの、Miku?」
困惑気味に雄介さんが尋ねてきた。
「え?いや、えーと、何でもないですよ!」
挙動不審な感じで返事をした。
「本当に?だって、顔真っ赤だよ」
そう言うと、雄介さんは、私に近づいてきた。
「あの、雄介さん?」
「ちょっと失礼するよ」
そう言って、雄介さんは、私の額に自分の額を当てた。
「っっっっっ!」
どうしよう!ドキドキが止まらない!
「ん〜、若干熱いね。本当に大丈夫?」
「いや、えっと、あの………はふぅ〜…」
次の瞬間、私は目を回した。
「ちょっとMiku、大丈夫!?目回ってるけど!おーい、戻ってこーい!」
あれからというものの…。私の雄介さんに対するドキドキは、なんだか虚しさを感じるものに変わってきた。
そのもやもやで集中力が欠けて、失敗することもしばしば…。雄介さんは、「気にしないで」と、いつも優しく許してくれたが、このままではいけない。
そう思った私は、Rinに相談するべく、彼女の部屋に向かった。
トントン
「Rin、ちょっといい?」私は、Rinの部屋のドアをノックする。
するとドアが開いた。
「あ、Miku。いいよ。今ある仕事は終わったから」
「ありがとう。失礼するね」
因みに、私はRinに、敬語を使わなくてもいいと言った。なんか、さん付けされて呼ばれるとむず痒い感じがしたから。
「で、どうしたの?」
Rinが私に尋ねた。
「ちょっと相談があって…」
「相談?」
「うん。実は…」
私は、今の私が感じているドキドキについて話した。「そっか」
話し終えると、Rinは、そう呟いて、こう続けた。
「多分それは、『恋』だと思う」
『恋』?それって…
「私は、雄介さんが好きってこと?」
「うん、そう」
Rinは頷く。
「でも、私は雄介さんのこと最初から好きだったよ?」
そう、私が雄介さんを好いているのは、始めから自覚していた。
すると、Rinがこう返してきた。
「それは、ご主人様としての雄介さんが好きというものだよ。今のMikuは、異性として雄介さんを好きなんだと思う」
…確かに今までの好きという感情とは、違う気もする。
ふとここである疑問が浮かんだ。
「ところで、なんでRinはそう思ったの?」
まぁ大方、誰かから聞いた話なのだろう。そう思っていた。
すると意外な言葉が返ってきた。
「…実は、私も雄介さんに対して、Mikuと同じような感情を抱いたの」
「そ、そうなの!?」
「うん」
「それでその後どうしたの?」
「思い切って自分の気持ちを伝えたよ。『私は、雄介さんが好き』って。そして、雄介さんは私の思いに応えてくれた」
と、嬉しそうな顔でそう言った。
「……そう、なんだ…」
ということは、私は雄介さんの恋人となることはできない。私と雄介さんは、『ご主人様とメイド』という関係で、Rinと雄介さんは、『恋人』という関係なんだ。それは、雄介さんの中でRinが一番のメイドだと思っていると言ってもいい。そう思うと少し悔しい…。確かに私は、Rinより雄介さんに仕えるのが遅かったから、仲の深さが違うのは仕方がない。だけど、それでもやっぱり………悔しい…。
そう心の中で落胆していると、Rinが驚きの一言を発した。
「Mikuも、雄介さんに自分の気持ちを素直に伝えたら?好きだって」
「っ!?何を言っているの!もう雄介さんはRinの恋人なんだよ?今更私がその仲に入れるわけ無いじゃない!」
私は声を荒げてRinを怒鳴る。私の気持ちを軽んじていると思って腹が立ったから。
でもRinは、優しく落ち着いて、こう返してきた。
「確かにそう思っちゃうよね。だけど、こんなふうに言うのは、Mikuと雄介さんに対する『好き』という感情を共有したいからなの。だって、雄介さんは二人のご主人様だもん」
「でも、Rinはいいの?このまま行けば、あなたは、雄介さんの一番のメイドになれるのよ?」
そう言うと、Rinは目を閉じて、こう言ってきた。
「私ね、最近誰が一番とかどうでもよくなったの。勿論雄介さんに一番って思って欲しい気持ちは変わらない。だけど、そこまで争う必要も無いと思うの。さっきも言ったけど、雄介さんは二人のご主人様だよ。大好きな雄介さんに仕えることが出来る喜びを共有するだけでいいんじゃないかな?」
…Rinは昔に比べると、物の考え方が随分と大人になった。今会話をしていて、そう思った。そんな頼もしく成長した姿に先輩の私は、嬉しさと寂しさを感じた。
そうだ。Rinがここまで自分で考えてやって来たんだ。先輩の私がこんなウジウジしててどうする!こんなんじゃ女が廃る。思い切って自分の気持ちを素直に伝える。だけど…
「本当に、Rinはそれでいいの?」
「うん。やっぱり、自分の気持ちには素直になった方がいいよ。そうすれば、モヤモヤもきっと晴れるよ」Rinは、笑顔でそう言ってきた。
「分かった!私、頑張るよ!」
「うん!その調子だよ」
「相談に乗ってくれて、ありがとね」
「どういたしまして。応援してるよ」
そんな会話をしていて、ふと時計を見ると6時を回っていた。
「そろそろ雄介さん帰って来るね。お仕事再開だね」そう言うと、Rinがこんな提案をしてきた。
「じゃあ今日は、雄介さんの身の回りのお世話をMikuがやるといいよ。その時間の中で、ね?」
「…分かった。頑張ってみる!」
受け入れて貰えるかな?この気持ち。そう思うと不安でいっぱいだが、そんなの感じている場合じゃない。私は、私の想いをぶつけるのに集中しよう。
私たちは、仕事に取り掛かるべく、Rinの部屋を後にした。
明日も一つ投稿します。