表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/82

プロローグ

えぇっと、前作『バトルガヴァメント』は、作者の事情により更新不可能となりました。ご了承ください。

今回のは、前作と違いコメディ的なものも取り入れたものの、どうにも自信はありませんが、どうぞ飽きないでお読みください。

※追伸〜初めてこの作品をお読みになる読者様へ〜

この作品は、元は私がライトノベルを読んで書いていたものなので、序盤の文章能力は正直見苦しいものがあります。ですが、後半からは段々と文章能力が上がっていっていると思うので、序盤の時点で評価をつけるのは止していただけると有難いです。

作品が完結後、序盤の文章構成と、2ndエリア編が若干修正が入りますが、物語を進めていく上で支障は無いので、ご安心してお読みください。

 それは遠い日の約束。

 叶うわけがない、虚無に消える約束。

 交わしてはならなかった約束が、そのとき交わされた。


「また、会おうね・・・・・・」


 少女が、悲しみを浮かべた笑顔で彼に向かって言い放つ。


「・・・・・・」


 彼は少女をただじっと見ているだけ。

 少女の、蒼い瞳をじっと見ているだけ。

 何の感情も見られない、ただ少女の存在を記憶に焼き付けるかのごとく、一点目視で少女を見ている。

 少女が涙を流す姿。

 少女が笑っている姿。

 少女が恥ずかしがるような姿。

 少女が・・・。

 走馬灯のように駆け巡る記憶も、今だけの記憶と知る彼は、ただ少女を見ていた。

 少女は、一度涙を拭うと、彼と同じように彼を見る。


「また、会おうね・・・・・・」


 どうしても交わしたい約束。

 しかし彼は、ただ少女を見ているのみで、その約束を交わそうとはしない。

 構わず少女は、彼に願う。


「また、また・・・・・・」


 ついにこらえきれなくなった少女は、その場に泣き崩れる。

 彼は、同時に視線を落とし、少女を見続ける。

 悲痛にゆがんだ彼の目は、しっかりと少女の泣く姿を焼き付けようとする。


「どうせ」


 彼がふと、口にした言葉。

 少女は泣いたせいでぐしゃぐしゃになった顔を上げ、彼を見る。


「どうせ叶わないんだから、かったりぃだけだよ」


 少女はここで、彼の表情が悲しみに歪んでいたのを悟る。

 彼は、悲しんでいるのだ。

 そのことを知ったとき、彼も同じなんだと、少女は思う。

 少女は矛盾したような喜びを感じた。

 涙をもう一度拭って、立ち上がる。

 彼が自らの蒼い瞳を見るように、少女も彼の黒い瞳を見つめる。

 彼の、一つしかない瞳を見つめる。

 また、会おうねと、無言でまた伝える。

 彼は思いを悟ったのか、少女から初めて視線をそらし、これから自らが向かう場所に目を向ける。

 少女は、彼の見据える道を、共に見つめる。

 黒い、大きな、地獄のような場所。

 自分があそこに入ったらと思うと、今すぐにでも身を投げ出したくなるような、そんな場所。


「なぁ、聞いてもいいか?」


 彼は依然と行く先を見据えたまま、少女に問うた。

 少女は彼のほうに目をむけ、彼の問いに答えようとすべく、何?と返答する。


「目で見えないものって、どうやって見ればいいと思うよ?」


 少女は問いの意図が理解できず、首をかしげる。


「そうだな、例えば俺らの仲ってどんなもんなんだろうな?仲がいいのか悪いのか、目で見ればすぐわかることなのに、見えないからわかんないじゃん?」


 仲はいいはずだよと、言ってやりたかったが、こうなってしまってからはそう言えない。


「でもさ」


 彼は続ける。


「案外、全部見えちゃうと辛いんだよね・・・」


 彼の瞳が、さらに悲痛にゆがむ。

 彼のたった一つ見える瞳は、絶望しか写せない。

 それを知る少女は、そんな彼を見てうつむき、少し震えながらつぶやく。


「きっと、全部なんて見えてないよ」


 震えがとまらない体を抱きしめる。


「だからまだ助かるよ」


 怖がってたらいけない、そう心に言い聞かせる。


「きっと助かるよ」


 希望を捨ててはいけない、そう自らに言い聞かせる。


「だから、だから・・・」


 しっかりとした瞳、蒼い瞳で彼に訴えるように、言い放った。


「私は、必ずあなたを助けに行くから。絶対」


 少女の目に、彼が初めて見る光が灯った瞬間だった。

 一瞬呆けていた彼だが、ふっと笑みをこぼすと、


「期待しないで待ってるよ・・・」


 そんな言葉を、彼は少女に残す。


「出来れば期待して待っててほしいな・・・」


 彼に微笑みかけ、いや、微笑んでいるのに『満面の笑み』ともいえる笑みをこぼす。

 ふっと、彼もその笑みにつられて笑う。

 そして、その笑みを残して彼は歩み始めた。

 その背中を自らの体で追いかけられない少女は、必死に目で彼を追う。

 絶望へと向かう彼の背中を、いつまでも目で追っていた。




「また、会おうね・・・」


 彼に聞こえない小さな声で、そうつぶやいた。

 すべてを決した目で、すべてを見据えた。





「かったりぃよ、何もかも・・・」


 彼は、絶望へと足を踏み入れる。

 すべてを諦めた目で、見るのをやめた。

 



評価、感想をよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ