プロローグ
えぇっと、前作『バトルガヴァメント』は、作者の事情により更新不可能となりました。ご了承ください。
今回のは、前作と違いコメディ的なものも取り入れたものの、どうにも自信はありませんが、どうぞ飽きないでお読みください。
※追伸〜初めてこの作品をお読みになる読者様へ〜
この作品は、元は私がライトノベルを読んで書いていたものなので、序盤の文章能力は正直見苦しいものがあります。ですが、後半からは段々と文章能力が上がっていっていると思うので、序盤の時点で評価をつけるのは止していただけると有難いです。
作品が完結後、序盤の文章構成と、2ndエリア編が若干修正が入りますが、物語を進めていく上で支障は無いので、ご安心してお読みください。
それは遠い日の約束。
叶うわけがない、虚無に消える約束。
交わしてはならなかった約束が、そのとき交わされた。
「また、会おうね・・・・・・」
少女が、悲しみを浮かべた笑顔で彼に向かって言い放つ。
「・・・・・・」
彼は少女をただじっと見ているだけ。
少女の、蒼い瞳をじっと見ているだけ。
何の感情も見られない、ただ少女の存在を記憶に焼き付けるかのごとく、一点目視で少女を見ている。
少女が涙を流す姿。
少女が笑っている姿。
少女が恥ずかしがるような姿。
少女が・・・。
走馬灯のように駆け巡る記憶も、今だけの記憶と知る彼は、ただ少女を見ていた。
少女は、一度涙を拭うと、彼と同じように彼を見る。
「また、会おうね・・・・・・」
どうしても交わしたい約束。
しかし彼は、ただ少女を見ているのみで、その約束を交わそうとはしない。
構わず少女は、彼に願う。
「また、また・・・・・・」
ついにこらえきれなくなった少女は、その場に泣き崩れる。
彼は、同時に視線を落とし、少女を見続ける。
悲痛にゆがんだ彼の目は、しっかりと少女の泣く姿を焼き付けようとする。
「どうせ」
彼がふと、口にした言葉。
少女は泣いたせいでぐしゃぐしゃになった顔を上げ、彼を見る。
「どうせ叶わないんだから、かったりぃだけだよ」
少女はここで、彼の表情が悲しみに歪んでいたのを悟る。
彼は、悲しんでいるのだ。
そのことを知ったとき、彼も同じなんだと、少女は思う。
少女は矛盾したような喜びを感じた。
涙をもう一度拭って、立ち上がる。
彼が自らの蒼い瞳を見るように、少女も彼の黒い瞳を見つめる。
彼の、一つしかない瞳を見つめる。
また、会おうねと、無言でまた伝える。
彼は思いを悟ったのか、少女から初めて視線をそらし、これから自らが向かう場所に目を向ける。
少女は、彼の見据える道を、共に見つめる。
黒い、大きな、地獄のような場所。
自分があそこに入ったらと思うと、今すぐにでも身を投げ出したくなるような、そんな場所。
「なぁ、聞いてもいいか?」
彼は依然と行く先を見据えたまま、少女に問うた。
少女は彼のほうに目をむけ、彼の問いに答えようとすべく、何?と返答する。
「目で見えないものって、どうやって見ればいいと思うよ?」
少女は問いの意図が理解できず、首をかしげる。
「そうだな、例えば俺らの仲ってどんなもんなんだろうな?仲がいいのか悪いのか、目で見ればすぐわかることなのに、見えないからわかんないじゃん?」
仲はいいはずだよと、言ってやりたかったが、こうなってしまってからはそう言えない。
「でもさ」
彼は続ける。
「案外、全部見えちゃうと辛いんだよね・・・」
彼の瞳が、さらに悲痛にゆがむ。
彼のたった一つ見える瞳は、絶望しか写せない。
それを知る少女は、そんな彼を見てうつむき、少し震えながらつぶやく。
「きっと、全部なんて見えてないよ」
震えがとまらない体を抱きしめる。
「だからまだ助かるよ」
怖がってたらいけない、そう心に言い聞かせる。
「きっと助かるよ」
希望を捨ててはいけない、そう自らに言い聞かせる。
「だから、だから・・・」
しっかりとした瞳、蒼い瞳で彼に訴えるように、言い放った。
「私は、必ずあなたを助けに行くから。絶対」
少女の目に、彼が初めて見る光が灯った瞬間だった。
一瞬呆けていた彼だが、ふっと笑みをこぼすと、
「期待しないで待ってるよ・・・」
そんな言葉を、彼は少女に残す。
「出来れば期待して待っててほしいな・・・」
彼に微笑みかけ、いや、微笑んでいるのに『満面の笑み』ともいえる笑みをこぼす。
ふっと、彼もその笑みにつられて笑う。
そして、その笑みを残して彼は歩み始めた。
その背中を自らの体で追いかけられない少女は、必死に目で彼を追う。
絶望へと向かう彼の背中を、いつまでも目で追っていた。
「また、会おうね・・・」
彼に聞こえない小さな声で、そうつぶやいた。
すべてを決した目で、すべてを見据えた。
「かったりぃよ、何もかも・・・」
彼は、絶望へと足を踏み入れる。
すべてを諦めた目で、見るのをやめた。
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