黒炎
朝家を出ると黒い塊が落ちている。真っ黒な髪に黒い騎士服、黒いマントを纏い倒れている。
「あのー…大丈夫ですか?」
返事が無い。見える限り怪我とかはして…ないな。んー…どうしよう。しがない令嬢に運べるかな。悩みながら見ていたら、近所のカロンがどうした?と聞いてくれる。コレ幸いとばかりに一緒に運んで欲しいとお願いをし、小屋もとい私の部屋に連れて行く。
「アリス大丈夫なのか?見つかったら怒られないか?」
「んー見つからないようにするよ。ありがとう。」
私は一応伯爵家の娘なのだけれど、まぁわかりやすく虐待をされている。小屋に住まわされ家族の扱いをされないという虐待のお手本のような扱いをうける。そういう本があるのかと思うくらいだ。前妻の娘はこう扱いましょう!みたいなね。自分で言いながら笑ってしまう。
しかし…どうするかな。とりあえず運んだものの困ったなー。ベッドで横になる人を見ると…え!待って!めっちゃ男前じゃない?えぇ…助けたお礼に嫁に貰ってくれないかな。それか雇ってもらう?家からは出たい。よし!丁寧に扱って恩を売ることにしよう。
マントを脱がし水を汲んできて汚れを拭く。倒れていた原因はなんだ?空腹?呪い?眠りの王子様かな?冗談はさておき、お医者様に来てもらいたいけど…こっそり呼べるかな?
「ぐぬぬ…腹痛で死にそう。死んだらこまるだろうからお医者様を呼んでください…あぁ死ぬぅ…」
私は本邸に行き迫真の演技でお医者様を呼ぶことに成功した。ちょろい。来てくれたお医者様にお願いをし黒い人を見てもらう。
「これは…寝てますね。疲労で倒れていただけでしょう。しばらくしたら目を覚ますと思いますよ。」
お医者様にお礼を言い見送る。疲労か…あまり恩売れないな。命くらい助けないと嫁には貰ってもらえないだろう。残念だけど多少のお礼を目指し看病をする。とりあえず上着を脱がすか…騎士服を脱がし汚いので一応洗う。しまった!私ベッド無いじゃないか。床?嫌だな。まぁ床で寝てたらさらに恩売れるか。
少しの固いパンを食べ床に寝転ぶ。これはいよいよだな。人として末期だ。
「ゴメン!私のためにこんな床でなんて!」
は?何?朝からうるさい。目を開けると黒い人が起きて私の横に跪いている。男前が凄く謝っている。罪悪感いっぱいの演出が効いたようだ。
「私など良いのです。お腹はすいてませんか?」
「…ありがとう。何かあれば頂きたいです。」
ぐぅとお腹が鳴る黒い人に、どうぞっとスープとパンを出す。私舞台俳優になれる。今のところ優しくか弱い令嬢を装い恩を売る計画は完璧だ。
「体調はいかがですか?昨日家の前に倒れられてたので私の家に運ばせて頂きました。」
「大変助かりました。私はレイモンド·コベットで騎士団に所属しております。昨日まで北へ行っておりまして、あまりに疲れて眠ってしまったようです…本当にありがとうございました。」
頭を下げお礼を言ってくれる。黒い人はキョロキョロと周りをみて、お家と伺いましたがお1人でお住まいですか?と。
「あ…ここは伯爵家で本邸は向こうなのですが、私は立ち入る事を許されてなくて…ここに1人で住んでます。幼い頃からずっとなのでもう慣れました。」
涙を浮かべながら言ってみる。なんて酷い扱いを!訴えた方がいいですよ!と怒っている。言った事はあるのですが、後で恐ろしい目にあって…と怯えた風に泣く。
「こんな所へ置いておけない!私とココを出ましょう?騎士団か家か…我が家で1度最善策を考えましょう?上司にも相談します。」
「私一緒に行きたいです!」
泣きながら言う私に、行こう!と言ってくれる。え?良い人過ぎない?大丈夫?こんなチョロいと悪い人に騙されるよ?この優しい人が誘拐犯になったら困るので、ちょっとあっちの通りで待っててもらっていいですか?と告げ本邸に向かい暴れる。
「お前など出ていけ!」
わかりました…と俯き泣きながら本邸から走り出る。そのままお待たせしましたー!と黒い人の元へ走って向かう。やったー!自由だー!!
近くに乗っていた馬が居たらしく、抱えて乗せてくれる。家に行くねと言い走り出すが、なかなか恥ずかしい。男前に後ろから抱きしめられ照れない令嬢はいない。
しばらく走りココだよってバカでかい門を入っていく。進むと恐ろしいくらいに豪邸!!は?ヤバくない?これ家なの?拾って良かったー!自分の運の良さに震える。
震えるほど怖かったよね?もう大丈夫だよって、優しく撫でてくれ抱っこしておろしてくれる。本当にこの人大丈夫か?心配になる。
「私の命の恩人だから、大切に扱うように。」
抱っこしたまま指示を出し、中へと連れて行ってくれる。ソファーにそっと座らせてくれ、今日はゆっくりしてねって微笑んでくれる。
「お兄様!!」
急に扉が開き性格の悪そうな女が入ってきた。お兄様が変な女連れてきたって!誰!?喚いている。
「静かにしろ。命の恩人なんだ。」
「絶対目的があるのよ!お兄様かお金か!変な女に騙されないで!」
私を指さしながらお兄様に訴えている。そらそうだ。真っ当な意見である。実際そうだし。
「彼女がそんな訳無いだろ!命の恩人だって言っているだろ!部屋から出ていけ!」
俯く私にごめんねって謝ってくれる。心配すぎて不安な顔になってしまう。大丈夫だからって抱きしめられる。
あぁ…恩を売る相手を間違えたかも。黒い人の腕の中で一抹の不安を抱えながら、これからの自身の幸せを願う。
とりあえず短編で。また今度続きを書こうかなと思ってます。




