溺愛される悪役令嬢〜こ、こんなはずでは!〜
久々の投稿です!よろしくお願いします!(´∀`*)
「アルテイシア!君との婚約を破棄する!」
「そんな!」
お決まり卒業パーティー婚約破棄です!
前世でめっちゃ見た!!
そう、私には前世の記憶があるのです。
現代日本に生きた一般女性。
最後がストーカーに殺されたとこだけちょっと違う。
公爵家の娘としてオギャアと生まれさくさく育ち、この国の王子と婚約。
その顔合わせの日に記憶を取り戻したのです。
思いましたよね。やっべ悪役令嬢ぽいなって。
しかし思い出したのは前世の記憶だけではありません。
前世と今世のその間——……
死後転生前に、謎空間で女神っぽいなんかに言われたのです。
「あなたは溺愛される悪役令嬢になるのよ〜」と。
なんのこっちゃかわかりませんが否やも諾もないままにオギャアしたのでどうしようもありません。
生前なろう読者でしたので、 自称悪役令嬢実質ヒロイン断罪回避オモロ女溺愛こっこんなはずでは///系勘違い耳遠逆ハーのあれか?膝乗せられて飯食わされるんか?と思いはしました。
嫌いじゃない。嫌いじゃないよ〜!カモン逆ハー溺愛!楽勝人生にわくわくです。しかしなにが悪役なのか。楽していきたいその性根と言われりゃサーセンですが。
そんな期待とともに日々はすぎ——…
王子はふつうにいい人で、仲も良好。
転生チートで成果をあげたとかでもないのに周囲の評価はやたらいい。
友人に愛され家族に甘やかれ逆ハーまではないけどなるほど溺愛っちゃ溺愛ですわーなんならちょうどいい塩梅。
サンキュー女神……!!!とのんきにすごしていたのです……が………
全ては変わってしまったのです。
ピンク頭の男爵令嬢が学園に転入した、その日から——…!!
王子はピンク頭を侍らせ私を遠ざけるようになりました。
仲の良かった友人たちは離れ、家族までもが私に冷たくあたります。
強制力!?強制力ってやつ!?
とおののきましたがそもそもこの世界に原作があるのかどうかもわかりません。
そして今——…
学園の卒業パーティーで、壇上に立つ定番ピンク頭へばりつかせ王子から、指を突きつけられているのです!
まるで悪役令嬢のように——……なんもしてないのに。
いやまじでいいもわるいもなんもしてないんですよね…それで断罪される系もあったな…
とはいえ正直あまり心配はしていません。
女神っぽいのの言葉のために。
これまで愛され幼女系だったのが方針かえてドアマット救われてのち溺愛系になったのかなー国外追放かな隣国の王子かなというきもち。
とはいえ言わざるを得ない。流れ的に。
「わ、私が何をしたというのです!
なぜ婚約破棄などと…!」
「君が尊すぎるからだ!!」
「は?」
王子が言う。
「君はあまりにも美しく素晴らしく尊すぎる!
到底私ごときがそばに立つなど許されない!
私は学んだのだ真実の愛を!このピンク頭メアリーから!」
え、ええと?つまりいいふうに言ってるけど結局浮気?
「推しは愛でるものだと!!!」
「はい?」
ピンク頭がずいと前に出ました。
「ふふふ。アルテイシア様、私ごとき塵芥が御前を汚すことを謝罪いたします。ただ少し、ご説明を」
「は、はあ」
「私前世の記憶というものがありますの。
その世界では推しは尊び愛でるもの、手を出してはいけないという鉄の掟があったのです。
とはいえ…アルテイシア様はご存知ですよね?」
「そ、それはまあ…」
聞いたような気はするけどそんな推しとかいなかったんでわかりませんが。
ってかそれよりこの子も転生者!?
そんで私に前世もちって知っている!?
「推しは愛でるもの、手出しは厳禁。我らは常にただの壁——……
これぞ、我らストーカー鉄の掟!!」
「それはしらんわ!!」
思わず突っ込んでしまいましたがストーカー!?も、もしや…!!
「私は尊くめでたきアルテイシア様が不当に扱われているのが我慢ならなかったのです!!
王子もご家族もご友人も、アルテイシア様を愛しているといいながら平気でお側にはべるなどとあつかましい!!
ひとたびアルテイシア様を見上げれば気安い口など叩けようはずないのです!!
ですから教えて差し上げたのです!正しい愛し方を!!」
ざっ!!と音がして周囲をかこんでいた学園の仲間たちやその家族が一斉に膝をついた。
「アルテイシア様!これまでのご不敬お許しください!」
「友人などと神たるあなたに烏滸がましくも!」
「あなたを産み育てるだけで身に余る光栄にも関わらず不遜にも家族だなとと!」
「我らの無礼申し訳なく、お望みとあれば塵となってきえましょう!」
「お父様お母様!!みんなも!
やめて!頭を上げて!!」
ふたたび全員がざっ!!と立ち上がる。全員が私を見つめ、その目はぎらぎらしています。
こわい!!
王子が言う。
「尊きアルテイシア様にはこの国の国王兼神となっていただきたく!」
王冠を外した王が言う。
「アルテイシア様の御代ばんざい!」
神官長が言う。
「神とはアルテイシア様のこと!!」
「あ、あなたが!あなたがみんなをおかしくしたのね!!」
私はピンク頭をきっとにらみつけました。
しかしピンクは…
「いいえ!私はただ正しい愛し方を教えただけですわ!あなたはこの「悪役令嬢溺愛世界」の愛され令嬢なのですから!もとより愛されているのです!
ただ皆さんの愛し方が間違っておりましたので私が正しい愛し方を教えてやったまでですわ!!
邪神さまの力を借り、死んだあなたの魂を追ってきた甲斐がありました。
今後とも末長く見守らせていただきます!!」
「あなたやっぱり!!
前世のストーカーね!私を殺した…」
「いいえ違います。私は別のストーカー。
あんな推しに手を出すようなできそこないではありません。
出会ってからのあなたの全ては記録しましたがゴミに出されたお宝をゲットするだけで窃盗などは行わずご実家のアルバムなども複写するのみ、ご友人方の写真フォルダはハックしただけ、どなたにも気づかれることありませんでした。
あなたの最後の呼吸を見届けられたのは私が前世最大の誇りです!」
「は!?べつの!?てか殺されたとこ見てたの!?
なら助けてよ!!」
「だめですよ推しは愛でるもの、手出しは厳禁ですから。
とはいえ推しに死なれると困るのであのストーカーもどきのような誤った愛し方はしないようこちらのみなさんへ教育はさせていただきました。
自分的にギリセーフかなって感じですけど基本観測だけしたいんでマジ早死とかしないよう今後は自分で気をつけてくださいよーまったくうっかりさんなんだから♡」
「きーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
そしてピンク頭は処刑。
王だか神だかになった私が命じたからです。
全国民に知恵を絞らせとにかく長く苦痛を味合わさる方法で処しましたが、あのくされピンクは「推しによるご褒美!うひょひょーーー!!」とうひょうひょしていました。クソが!!
国の仕事なんかは皆がやってくれるし私はただ遊んで暮らすだけ。他国もどんどんさしだされ世界統一、私のためにとなんかしらんけど文明文化も発達し、ファミコンまではできたので暇は潰せている日々です。
女神は言いました。
あなたは溺愛される悪役令嬢になるのよ、と——…
たしかに溺愛されています。
人民はアルテイシア様のためにと食うもの食わず夜も眠らず働いているので悪役と言えるかもしれません。
尊いあまりに未婚ですので令嬢です。
女神の言葉は叶ったと言えましょう。
しかし…しかしどうしても、思ってしまうのです——……
「こんなはずでは!!」
——……そして同じ頃、この悪役令嬢溺愛世界を創造した「悪役令嬢好きの女神」も空の上で「こんなはずでは!」と叫び、
その弟の邪神もまた、軽い嫌がらせで混入させた一人の魂のためにこんな事になるなんて…と恐れ慄き、同じ言葉をこぼすのでした——……!
♡完♡
お読みいただきありがとうございます!
ピンク頭はアルテイシアの背後霊になりました!(´∀`*)




