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19:あれだ、もちはもち屋とかいうやつだ

 ちょうど、そのすぐ夜のことだ。


 缶チューハイを呑んでやけに機嫌の良い松前を終電前に追い出し、日が替わり、自分もそろそろ床につこうと思っていた時間だった。


「……う、ぅ~~~……」


「? 絆賀?」


 静かに寝ていたはずの絆賀が、急に苦しみだしたのだ。ぜっ、ぜっ、と荒い息と、赤い顔。頬に貼り付く汗。


 その様子を、ほんの数秒だけ確認した自分は、さっそくお袋様のご厚意に甘えることを選択した。あれだ、もちはもち屋とかいうやつだ。


 自分で言ったことは基本的に守り通すのが人道のお袋様は、三コールにもならないうちに受話器を上げた。


《あんたにプライドはないのかい》


「無知を無知だと言って何が悪い」


《そういうところ、誰に似たのかしら》


「お袋だろどう考えても」


 軽口もそこまで。


 ざっと説明をすると、お袋は咳の有無、嘔吐・嘔気の有無などを問う。両方無いと答えると、水を飲ませて、飲めるようなら心配ないと言った。


「絆賀、水。飲めるか?」


 頭を抱えてゆっくり起こし、水を飲ませる。


 さっきまで苦しそうだったのが嘘のように落ち着いた絆賀をもう一度寝かせ、にじんだ汗を拭いてやる。


《子供って、なぜか夜中にいきなり熱出すのよね。あんたなんて、昔に一度、引きつけ起こして夜間病院までタクシー走らせたこともあるわよ》


「あ~……なんとなく記憶あるわ」


《結局、栄養剤点滴して一晩寝たらけろっとしちゃってねえ。まあ、子供なんてそんなものだわ。すぐに良くなるわよ》


 うん、と返事をして、お礼だけ言って通話を切る。


 翌日。お袋の言う通り、絆賀はけろっとした顔で普通に起きた。昨日まで……というよりは、ほんの数時間前までゼエゼエ言っていたくせに。


「……熱も無いか。さすがの免疫力だな」


「ゆーひさん。お腹すいた」


「はいはい」


 トーストや白ご飯はまだ少し食べる気にはなれないらしく、松前が買ってきておいてくれたらしい茶漬けの素と湯をかけてやる。


「……今日、学校行ってもいい?」


「いいよ。そのかわり、給食は無理して食べないこと、外で走ったりもやめておけ。しんどくなったらすぐに先生に言うこと。いいな?」


「はいっ」


「よろしい。じゃあ時間割りして」


 いつも見ているニュース番組が、朝の占いを流し始めた。

引きつけを起こしたのは私自身の実話だったりします。相談センターかどこかに電話をして救急車をよんでくださいと言われた母は、それをきっぱり断り、自分で車を出して私を病院まで連れて行ったそうです。

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