14:今度、メシ奢る
「なあ、お前ほんとうに、元木の子供を引き取ったのか?」
「は? だったらなんだよ」
葬儀の日、隣に座っていた同期が訊いてきたのに、やや顔をしかめて返す。
いろいろと慌ただしい日が続いたが、なんとかやれている。いや、なんとかやっていると言ったほうが正しい気がする。
「いや、まぁそりゃ、俺とお前と元木で何かとセットにされてたし、実際それで上手くやれてたから、他の奴より思い入れがあるのも分かるけどよ」
「お前らとセットになった覚えはない」
「はぁーーー言ったな!? おめー社内でアンケートとってみろよ絶対セットにされてっから!」
うるせぇ。
本当にうるさい。
「父方の実家は一部除いてクソだったし、母方はもう親族すらほぼいない。むしろ今は、引き取って良かったと思ってる」
あんなところ、小学生がいていい場所じゃない。
そういう意味で言ったんだが、どうもこの馬鹿には理解できなかったらしい。やたらとニマニマしてくるので1発殴っておいた。
「まぁ、上手くいってても上手くいってなくても、子供ってのは突然何かしでかす生き物だからさ。よく見てやれよ。ふと気づいたら熱出してたとか、割とガチでザラだから」
「あ〜………そういうときって、休むしかねぇよな。病院とか看病とか」
「お前、看病とかできんの???」
そのへんは知らん。
「河中さん、外線4番です」
「はい」
事務の人からの声に返事をして、自分の机の電話を取る。
まぁ、いわゆるタイムリーな相手だった。向こうの声に二つ返事で了承して受話器を置く。
「なに、どした」
「フラグ回収だ。帰るからあと頼む」
やってた仕事を簡単にまとめてデスクに立てて、鞄を持った俺に、同期は嫌そうな顔も見せない。
「マジか! りょーけー、お大事に!」
『りょーけー』とは、『了解』と『OK』の複合体である。フランクで気に入っているらしい。
「今度、メシ奢る」
「やりぃ!」
礼を受け取るのも上手い。俺と違って世渡り上手なのだ。本当なら、もっと早くに昇格してたっておかしくないくらいには、人情に篤くて人望がある。
小学校につくと、すぐに保健室へ案内される。
熱を出したと聞いた絆賀は、保健室備え付けのソファに座り、保健室にあったらしい野菜の絵本を読んでいた。
「見た目は元気そうなんですが、担任の先生が、いつも以上にぼんやりしているなと感じたそうで……。測ってみたら7度8分ありました。すみませんが、今日は早退ということで……」
「わかりました。お世話になりました」
保健医に挨拶をして、絆賀を連れて学校をあとにした。
熱を自覚したら怠くなるのは子供も同じらしく、途中で寝落ちてしまった。マスクはさせているが、この体調で電車に乗せるのもいささか不安だ。
………と、なると。母子手帳に手書きであった、彼のかかりつけを思い出す。小学校と“実家”がこの近くなだけあって、かかりつけ医はすぐに見つかった。
「おや、絆賀くんじゃないか」
「すみません、予約も何もしてないんですが」
「かまいませんよ。今日は他に患者もいませんし、すぐに診ましょう、こちらへどうぞ」
自分でたてたスケジュールなのに守れないのどうにかしてほしいほんとに(自戒)。
これからまた、ちまちまと飛ぶと思います。
先に謝罪させてくださいすみません。




