13:そんで、あなたのお名前は?
自分が場違いなことに、気づくのが遅すぎた。
周りが、ほとんどみんな母親だ。
「……以上が、担任からのご連絡です。何かご質問はございますでしょうか」
…………。
「はい」
手を挙げる。多分、自分が戦えるのはここだけだ。
「……えっと、」
「失礼しました。このたび元木絆賀の保護者になりました、河中勇飛と申します。この歳にもなって子供を育てるのは初めてなので、ご迷惑をおかけするかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします」
腰からしっかり頭をさげる。
「それで……以前に絆賀が、『自分はもう普通の子にはなれないのか』と訊いてきたことが気になりまして。先生、お心当たりはございますか」
少しざわめく。
担任の教師は少し若さのある女性だった。
彼女は慌てたように立ち上がる。
「えっ、いえ! 私はただ、『ご両親を亡くしてつらい思いをしているから、いつもどおりに接してあげてほしい』って」
「言われて普通にできるほど、小学一年生の児童は器用なんでしょうか」
あ、と口に手をあてた母親が何人かいた。
「いえ、器用な子はうまくやるでしょう。それは一部でしかないとも思いますが。自分が思う“小学一年生”は……その異質を平気で揶揄します。こちらでサポートもしていきますし、今回のことは彼の中で納得できていると思います。……ですが、くれぐれも、言動にご注意お願いします」
こくこく、とうなずく担任に、「以上です」ともう一度礼をして座った。
……今になってギリギリと胃が痛む。
クラスでの保護者会が終わると、全校集会が終わったらしい児童たちが教室に戻ってくる。律儀に並んだ列を作った児童は、自分の親を目にすると顔を輝かせて駆け寄っていく。
「ゆーひさんっ」
「! おう、おけーり」
「ふへへ」
くしゃりと前髪を混ぜてやる。
穂積さんと遊んでからか、絆賀はかなり明るくなった。
父方の親族とは極力関わらせないようにしているが、遠ざければ遠ざけるぶん、相手方はより強く絆賀に会いたがっているような気がする。
……とりあえず無視し続けよう。そのうち諦めてくれるかもしれないし。
「あ、あの」
「……はい?」
「あ、りゅうくんのお父さん」
絆賀が言う。
「ご挨拶が遅れて申し訳ありません。絆賀くんが、よく遊んでくださっているようで。南龍之介の父です」
「ああ、……どうも。こちらこそ。そんで、あなたのお名前は?」
その男は、きょと、と目を丸める。
「……と、友人です。南友人」
「友人さん。俺も勇飛で構いません。これからよろしくお願いします」
こちらこそ、と眉をハの字にしたまま笑う友人さんと握手をする。
「りゅうくんち、お父さんだけなんだよ」
絆賀が自分の腕を引く。
「ああ、なるほど。それはまあ」
「男親だけ同士、頑張りましょうね。あ、連絡先訊いてもいいですか」
……まあいわゆる、パパ友というやつだ。いや、パパではないが。
サブのネームドキャラが女性ばかりだったので男性を出しました。ハーレムは回避です。




