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境界のソードファンタズマ  作者: 矢崎 那央
第1部12話『ぬるま湯でラブコメする者たちよ。見よ、これが"戦略的ラブコメ"だ』
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第3幕『R≪リクをリクっとさせる≫作戦、始動』


 私はそっと手元の地図をくるりと裏返し、そこに——赤字で殴り書きした。



 「R作戦」

 (読み:リクをリクっとさせる作戦)


 

 「作戦目標は、リクの理性の崩壊よ」


 「はいっ!」

 

 エナが即座に立ち上がって敬礼する。なにその反応速度。訓練された近衛隊か。



 「では、各種作戦案を検討しましょう」


 「ほんとに戦略会議みたいですね……」



 アリスが、膝上に開いたノートにメモを取りながら淡々と言う。分析官の貫禄が出てきてる。


 



第一案:【強行突入型】


——対象との物理的接触を伴う積極的接近。


 「要は、触る、くっつく、乗っかる、囁く、の四拍子ね」


 私は作戦計画図代わりの紙に、ざっくりと例を書き込んだ。


 - 胸を押し当てる

 - 布団に潜り込む

 - 不意打ち抱きつき

 - 膝枕+耳元ささやき


 

 エナが、ぴょんと手を上げる。


 「それ、もう全部やってます!!」


 「甘いわ!」


 私は即座に断言した。


 「いい?あなたがやってるのは、“日常的に、人前で”。それは防衛ラインを崩さず、本丸を攻撃目標にしたのと一緒よ。重要なのは、“ふたりきりで、人目のない場所で、逃げ場を封じた状況下での突貫”。ここに意味があるのよ」



 「……なるほど、つまり先程の男湯突撃は……」


 「そう、敵戦力を見誤った上での迂闊な軍事行動だったわね」


 「なんか軍師みたい……」



 「敵の防衛ラインは、“羞恥心”と“逃避行動”よ。そこを突くの」



第二案:【散発攻撃型】


——対象の視線・想像力を活用した間接的心理攻撃。


 アリスが即座に前傾姿勢になる。



 「それは、わたしの得意分野です」


 「さすがおねーちゃん!」


 「あれ? でも、それなら既に効果無いってことじゃ……」

 


 ツッコミを入れるエナに、私は指を一本立てた。


 


 「これは“潜在的ダメージ”なのよ。効果が“顕在化していない”だけで、地味に効いてる可能性がある。要は、継続的にドキッを与えていく波状攻撃。三人でタイミングずらして仕掛けるのがコツよ」


 


 - 着替えシーンを“偶然”見せる

 - うなじ・太もも等の色気部位チラ見せ

 - ボディライン強調衣装

 - 不意に距離を詰めてドキドキさせる


 


 「ふむ……」アリスが真剣な顔でメモを取っている。もうちょっと顔に色気が欲しい。





番外案:【告白という最終兵器】


 「司令官。提案があります」


 アリスが手を挙げる。


 「発言を許す」


 「もう、素直に告白すれば良いのでは?」


 「ダメ。それは最後の最後、勝利を確信したタイミングじゃないと撃てない」


 「なぜでしょう。作戦即時却下の説明を求めます」


 「いい?これは誤解してる人が多いけど、“好きです、付き合ってください”って言葉、実は二段階を同時に踏み越えてるのよ」


 

 「……え?」



 「“好きです”=好意の開示=宣戦布告。“付き合ってください”=関係を求める=降伏勧告。その間の“攻略戦”すっ飛ばしてるから、『ごめん他に好きな人が』とか、『じゃあ友達から』とかなるの」



 「はぇ〜……」

 

 エナが感心してる。



 「しかも、私たちはもう宣戦布告は済んでるの。まさか、この状況であたしたちの好意に気づいてないなんて——」


 「そんな鈍感な人いませんよね……」


 「そうよ!、もしこの状況で“誰も俺なんかを好きになるわけないだろ”って……それはもう、脳みそが常時筋トレ中よ。

 恋心を察せないと言うより、雌雄の概念があるかどうかすら怪しいわ」


 


 「というわけで、告白はフィニッシュブロー。それまでは、包囲・動揺・攪乱・突撃・熱戦・消耗戦、全部やってからじゃないとダメ」





 私は地図の中央に、“R作戦”の文字をぐるりと囲った。


 「——さあ、作戦を開始するわよ。目標はただひとつ」


 


 「リクの理性をぶっ壊す!!」


 「がんばります!!ちゃんと新婚さんになるんです!」


 「計画案を記録に組み込みました。いつでも実行可能です」


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