第2幕『対リク攻略・戦略会議《ふとももに関する中間報告》』
「じゃあ、分析していきましょ。なぜ、リクは食いつかないのか」
まずは仮説の整理。
推定① 女嫌い or 女性恐怖症?
「——これは、ないわね」
私はすぐに却下した。
「わたしにも優しいです」
エナがうなずく。あの子、なんだかんだでリクの対応をよく観察してる。
「アリスに対しても、触れ方が丁寧。むしろ、繊細ってレベル」
「視線、声量、立ち位置……全てが“女性への配慮あり”の態度です」
アリスの冷静な分析に、私は小さくうなずいた。
「女性に対する拒否反応は皆無。むしろ、対応が王子様。
……逆にそれがムカつくのよね」
——却下。女嫌い説、消えた。
推定② 性欲が無い? or 特殊性癖?
「その線は、かなり気になるわね……」
そう呟いた私の横で、アリスがぬるりと口を開いた。
「リクがわたしを視認する際の、視線初動解析結果——」
「で、出た……」
エナが一歩前に出る。私は正座を整えた。これはメモ案件だ。
「顔部:42%、大腿部:28%、胸部:13%、脚部:9%、その他:8%。
視覚的性的関心は“正常範囲内”です。とくに“視線の再滞留”が大腿部に集中しており——」
「つまり……スケベではあると?」
「結論としては、Yesです」
「ていうか、わたしが胸押しつけたとき、一瞬ニヤけましたもん!」
エナが誇らしげに言うと、アリスがチラッと横目を向ける。
「……それは事実確認済みです。表情筋反応:1.4秒間の口角上昇を検出しました」
「見てたの!?」
「録画済みです」
私は頭を抱えた。
——性欲は、ちゃんとある。
ただし、それを完璧に抑え込んでるか、他にもっと“強い制約”が働いてる可能性がある。
推定③ 超奥手・チキン説?
「これも違うわ」
私ははっきり言った。
「リクは怖いもの知らずで、魔王領に単独潜入するような無茶を平気でやるわよ?」
「“決断力・行動力”の平均値も、戦士ランクで見た場合は明確に高めです」
アリスが、冷静に分析する。
「てか、あれで“チキン”だったら、世界中の男が鶏小屋に帰らなきゃならないわよ」
——よって、奥手説も消える。
「……じゃあ、なんで手を出さないのよ、あの男……!」
思春期男子よ?
ノーリスク混浴ハーレムよ?
バスタオル装備の最高級美少女三連星よ!?
なのに、ゲンコツで終了。
バグよ。これはもう、人生という名のエロゲの進行バグ。進行不能バグ。
「結論としては……性欲もあるし、女子もいける。でも“行動しない”。」
「いちばんヤバいやつです、それ……」
「うん、たしかに……バランス壊れてる……」
私は立ち上がった。
「——なら、探るしかないわ。なにがブレーキになってるのか。」
「三人で、ですか?」
「そう。これはもはや戦争よ。“攻略阻害因子”の正体を暴く。全力で、ね。」
窓の外に、王都の夜景が広がっている。
明かりの灯る広場、静かに眠る市民たち。
けれど、ここだけはちがう。
ルル・アリス・エナによる、非公認特殊作戦《ミナト攻略》、ついに始動。
恋とエロスとデータ解析を駆使した、本気の“ハーレム戦争”が、今ここに幕を開けた——!




