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境界のソードファンタズマ  作者: 矢崎 那央
第1部11話『俺たちの異世界デート』
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第4幕『迎賓館の夜は戦場だ』


 私たちが買い物を終えて戻ってきたのは、王都でも指折りの迎賓館だった。



 石造りの荘厳な外観に、白と金を基調とした内装。

 無駄に高い天井。無駄にふかふかの絨毯。そして無駄に開ける自動扉。



 ──完璧だ。


 

 リクが口を開く。


 「てっきり、今朝みたいな軟禁部屋に戻されると思ってたんだけど……」


 「はあ?なんで“星詠みの巫女”さまが、あんな薄暗い部屋に泊まらないといけないのよ」



 フン、と私は鼻を鳴らす。



 ……まあ、正直ちょっと、いやかなり無理はした。


 この迎賓館、普段は外交官や上級貴族用。

 星の巫女としての私の立場をフルに使って、なんとか押さえた。



 だって──



 明後日までの貴重な時間、1秒たりとも無駄にできないんだから!


 

 「部屋は各自ひとつずつ。しっかりくつろいでね」



 そう言いながら、私はそれぞれに鍵を渡した。


 ──旅の間、三人でひと部屋に寝泊まりしてたらしいじゃない。


 その事実を聞いた瞬間、ピキッときた。こめかみあたりに。


 男女共に無自覚なハーレム体質。こっちは死活問題よ。



 本当は、リクと二人部屋という線も一瞬考えた。

 でも、アリスとエナの視線を考えたら、それはあまりにも分が悪い。



 私は策を選んだ。



 いきなりボス戦に正面から挑むほど、私はバカじゃない。


 まず必要なのは、敵情視察と分断。

 すべては勝利のため。



 でもこれで、敵は分断。

 セキュリティもプライバシーも完璧。

 最高の戦場が、整った。


 あとは、情報を抜く。



 まずは、アリス。

 あの子、無表情で無感情っぽいくせに、リクに対してだけ“間”が妙に多いのよね。



 それから、エナ。

 無邪気な顔して、「はい!奥さんです!」とか言いやがるから質が悪い。

 あれは計算じゃない、地が悪い。無垢の皮を被ったダークマター。



 でも、逆に言えば──



 この館で過ごす今日と明日、私は“保護者”の顔をしながら、

 あらゆるチャンスを狙える。



 リク。覚悟なさい。あんたの心、丸裸にしてやるんだから。



 私は自室の扉を閉め、

 机に置かれたホットミルクを一口飲んだ。



 さあ、ここからが勝負よ。


 そして、私はみんなを待たせている応接室に向かった。


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