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境界のソードファンタズマ  作者: 矢崎 那央
第1部9話『声なき占領地、現れた少年』
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第6幕『王都、ただいまじゃねぇ』


 ——ガシャァン!


 目の前で、衛兵の槍が派手に落ちた。


 「な、なんだお前らはッ!? どこから現れた!?」

 「転移!? どこの所属だ!? 返答しろ!」


 城門の前、十数人の衛兵たちが、全員こちらに槍を向けている。

 そのうち二人は既に通信装置らしい水晶に叫び始めていた。


 ざわつく通行人。騎士の視線。次第に広がる警戒の輪。


 「……オレたち、今すげぇ誤解されてるよな」


 「リクの感想は、正しい状況認識です」


 アリスが即答した。


 俺たちは、魔王に無理やり転送された場所――王都・南門のど真ん中に、光の柱と共に“突然出現した”わけで。


 ……まあ、そりゃ警戒されるわな。



 「名を名乗れッ! 身分を証明しろ!」



 騎士隊の一人が迫ってくる。


 俺はとっさに、腰の鞘を押さえながら叫んだ。


 「えっと! 俺は——その、リク・ミナセ! 冒険者ギルド登録済み! 同行者に、えーと……」


 慌てて隣を見る。

 エナは敬礼みたいなポーズで笑顔を浮かべ、



 「奥さんです!」


 「やめろォォ!!!」


 「わたしは兵装制御補助端末、LC-01-A-03です」


 アリスが冷静に自己紹介しすぎて逆に怖い。


 


 騎士たちの眉がピクリと動いた。



 「LC……? コード名?いや部隊名言どこの部隊だ?」


 ——まずい。言えば言うほど余計にややこしくなるパターンだ。


 俺は慌てて、懐から一枚の紙を取り出した。



 「これ! これ紹介状! 神殿の星の巫女から!」


 「……これは……ルーンヴァイス家……!? とりあえず……通せ…」



 ようやく一人の将校らしき男が声を上げ、周囲の兵が道を開ける。


 城門前の殺気が、少しだけ和らいだ。



「……ふぅ。マジで死ぬかと思った」


 俺は、汗だくの額をぬぐいながら、小声でセブンに尋ねる。


 「なあ、これって……完全にアイツ(魔王)の“手配ミス”じゃね?」


 《計画的演出の可能性。演出目的:警戒度の計測、および都市内部への挿入成功率テスト》


 「うわ、めっちゃ嫌な使われ方してる……」



 俺はため息をついて、見上げる。

 王都の空は青く、どこまでも遠かった。


 その空の下に、“あの少年”が今どこかに居るのかもしれないと思うと——背中がひやりとする。



 それでも。



 「……ま、帰ってきた以上、やるしかねぇか」


 


 “魔王の次の一手”を知るために。

 “こっち側の準備”を整えるために。


 


 俺たちは、再び、動き出す。


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