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境界のソードファンタズマ  作者: 矢崎 那央
第1部6話『空に届く力』
30/80

第5幕『それぞれの戦い方』

 

 オレたちは、戦っていた。


 爆発音、金属のぶつかる音、モンスターの咆哮。

 そのすべてをかき分けて、前に出る。


 


 「上からくる!セブン、軽くして!」


 《2.4秒後に質量カット》


 


 「今!」


 アリスのワイヤーを踏み台に、オレは空中に浮かんだ。

 真下にいた狼型モンスターをセブンで一閃。



 ガキィン!



 硬い皮膚をぶち破って、地面に叩きつける。



 そのときだった。


 視界の隅、オレの背後。


 ——黒いモンスターが、壁を這って跳びかかっていた。


 

 「ミナセくん、後方だ」


 落ち着いた声とともに、

 白衣の男が、黒い紙片を指で弾いた。


 

 「ブラスト」



 空中で、紙片が爆ぜる。

 爆風がモンスターの軌道を逸らし、直撃を防いだ。


 

 そのまま、白衣の男は身軽に駆けていく。


 

 ——予想外だった。


 白衣のくせに、速い。軽い。

 すっと地面を滑るように動いて、次の呪符を宙に描く。



 「ウォール」



 モンスターの突進に合わせ、黒い障壁が展開。

 ぶつかったモンスターは、鼻を折ってひっくり返った。



 「防衛成功。……やはり、父とは守る者なのだ」


 どや顔で言ったが、言葉のわりに行動は地味にカッコいい。



 その次。


 白衣の男は、手のひらを前に出して構える。


 「創造還元術式・起動。

 ジェネシス・リサイクル・ゼロ」


 「なにその中二病魔法っぽい名前!?」



 その瞬間。


 

 バシュンッ!


 

 空気が歪んだ。


 手のひらから放たれた光の帯が、遠くの飛行型モンスターを一瞬で焼き尽くす。


 黒い煙すら残さず、文字通り“チリ”になった。


 

 「……お前、今の何」



 「父性だよ」


 「こわッ!?」



 そのあとも、白衣の男はまるで“教師”みたいに動いていた。



 周囲の王国兵たちが苦戦するポイントに呪符を投げ、

 爆破で敵の陣形を崩し、モンスターの足を封じる。


 

 盾を失った兵士の前に防御壁を展開し、

 傷ついた兵士を回収する隙を作る。


 

 オレが戦っている横でも、何度か敵の不意打ちを排除してくれていた。


 

 「さっきから、地味に助けてくれてんな……」



 「親心というやつさ」


 「なんでもかんでも、パパに結びつけるな!!」


 

 それでも、認めざるを得ない。

 この戦場で、オレたちは四人で生き延びてる。

 ちゃんと“戦えてる”。


 それぞれのやり方で。


 

 「よし、次ッ!アリス、支点構築!」


 「了解。補助支点、左上・右後方、同時展開」



 「セブン、質量段階2、重撃で叩き落とす!」


 《演算完了。反動を殺す着地支援に注意》



 足場に飛び乗り、風を切って、

 目の前のモンスターに、もう一度セブンを振り下ろす。


 

 戦場の混乱の中で。


 オレは、自分の選んだ場所で、自分の手で、誰かを守っていた。


 

 それが、ただの気まぐれでも。

 お人好しの一歩手前でも。


 

 オレは今、ここでちゃんと“生きてる”。


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