絆と未来へ
キャンプの夜は、静かな星空の下で進んでいた。騎士たちは交代で見張りにつき、周囲の警戒を怠らない。炎の揺らめきが暗闇を照らし、暖かさと安心感を僅かに与えていた。
セイラは焚き火のそばに腰を下ろし、戦鎚を膝に置いたまま、その重みを感じていた。目の前で揺れる火を見つめながら、自分の内なる恐れや迷いと向き合おうとしていた。
「セイラ様、少し休まないと身体がもちませんよ。」
マリアが温かいお茶を差し出し、優しく声をかける。
「ありがとう、マリア。でも、なんだか今日は眠れそうにないの。」
セイラは微笑みながらも、その瞳はどこか疲れた様子をしていた。
「無理もありません。今日の戦いは、私たち全員にとって大きな試練でした。」
マリアはセイラの隣に座り、焚き火の温かさを共有するように手を伸ばした。
「専属の魔法使いになるなんて…突然すぎるよね。」
セイラはそう呟くと、自嘲するように微笑んだ。「でも、マリアがいてくれるなら、心強いかも。」
マリアは少し驚いた顔を見せたが、すぐに微笑んで頷いた。
「私こそ、聖女様の力と意志に助けられています。これからも、隣で支えさせてください。」
セイラは静かに戦鎚を撫でた。
「この力で守れるものがあるなら、私はどんなに辛くても進みたい。でも、もし私が間違った道を進もうとしたら…その時はマリア、止めてくれる?」
「もちろんです。どんな時も、私はセイラ様の力になります。」
マリアの言葉に力が込められていた。
その時、セリオンが焚き火の向こうから現れ、冷静な声で口を開いた。
「聖女が迷う暇はない。だが、一人で戦う必要もない。仲間を頼ることを恐れるな。」
セイラは彼の言葉をじっと聞き、その通りだと感じた。
「ありがとう、セリオン。みんながいてくれるから、私は進める。」
その後、三人は静かな時間を共有しながら、それぞれが抱える思いを焚き火の熱に溶かすように、星空を見上げていた。
翌朝、朝靄の中、セイラたちは村へと戻る準備を整えた。騎士たちも昨夜の疲労を感じさせず、整然と行動している。焚き火の跡から立ち上る白い煙が、夜が明けたことを告げていた。
「セイラ様、準備はできましたか?」
マリアが声をかけると、セイラは戦鎚を軽く持ち上げて頷いた。
「うん。昨日のこと、ちゃんと伝えなくちゃね。」
セイラは少し緊張した面持ちで答える。
「村の人たちも安心するでしょうね。」
マリアは微笑みながらも、セイラの様子を心配そうに見守っている。
セリオンが冷静な表情で二人に近づき、短く言った。
「戻るぞ。村の再建に協力する時間も限られている。」
騎士団が隊列を組み直し、一行は村へと向かって歩き始めた。森を抜けると、遠くに村の輪郭が見え始める。村の門には、人々が集まり、一行の帰還を待っている姿があった。
「戻ってきたぞ!」
騎士団長が大声で知らせると、村人たちは歓声を上げた。
「聖女様だ!助けてくれたんだ!」
人々は口々に感謝の言葉を叫びながら、セイラの姿に目を輝かせている。
セイラは戸惑いながらも、人々の前に歩み出た。
「皆さん…昨日の戦いで村を救うことができました。でも、これは私一人の力ではなく、ここにいる皆さんと一緒に成し遂げた結果です。」
彼女の言葉に村人たちは静まり返り、次の瞬間、大きな拍手と歓声が湧き上がった。
「ありがとう、聖女様!」「私たちを守ってくれて…!」
その声に、セイラは自然と微笑んだ。
「これからも、この力を誰かを守るために使っていきます。」
彼女の瞳には決意が宿っていた。
その日、村は久しぶりに笑顔と希望に満ちた。そしてセイラにとっても、自分の力を認められた初めての瞬間となった。
セイラとマリアは今後も一緒に戦う仲間となります〜。次回もお楽しみに!
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