深淵の咆哮
セイラは戦鎚をしっかりと握り、魔物を見据えた。全身を走る緊張と恐怖を押し殺しながら、震える足で一歩前に出る。
「これが…私の力を証明する時…!」
巨大な狼のような魔物・グルムヴァイトは、鋭い牙を剥き出しにして低く唸りながら、今にも飛びかかろうとしている。その赤い瞳には、明らかな敵意が宿っていた。
「セイラ様、下がってください! 我々が先に動きます!」
騎士団長が叫ぶが、セイラは首を横に振った。
「いいえ、私も戦います。この力は、誰かを守るためにあるんです!」
その言葉に騎士たちは驚きの声を漏らしたが、すぐに黙り込む。セイラの瞳に宿る決意は、誰の目にも揺るぎないものだった。
「セイラ様、無理をしないでください!」
マリアが心配そうに声をかけるが、セイラは微笑んで応えた。
「大丈夫、マリア。あなたがそばにいてくれるなら、私は負けない。」
魔物が低い咆哮を上げ、ついに跳躍して襲いかかってきた。その瞬間、セイラは体の中に流れる力を感じた。戦鎚が光を放ち、彼女の手に吸い付くように馴染む。
「行くよ!」
セイラは大きく戦鎚を振り下ろし、地面を揺るがす一撃を放つ。
轟音とともに、魔物は攻撃を受けて後退した。
「やった…!」
一瞬の安堵が彼女の胸をよぎったが、魔物は再び起き上がり、さらに獰猛な表情で吠えた。
「まだ…終わってない!」
セイラは再び構えを取り、目の前の敵に集中する。騎士たちも彼女の背後に陣を取り、少しずつ連携を取る動きを見せ始めた。
「聖女様、私たちも援護します! 一緒に戦いましょう!」
騎士団長が声を上げ、騎士たちが一斉に剣を抜く。
「ありがとう…でも、私は私で戦う!」
セイラは叫びながら前進し、再び魔物に立ち向かった。
森の中に響く金属の音と魔物の咆哮。そして、セイラの戦鎚が放つ閃光は、彼女の決意と力を証明するものだった。
暗闇の中から姿を現した巨大な魔物、グルムヴァイト。
その全身を覆う黒い毛皮は、光を吸い込むかのように闇に溶け込んでいる。鋭い牙と爪が輝き、深紅の瞳がまるで獲物を見定めるようにセイラたちを睨みつけた。
「これが深淵の魔物、グルムヴァイトか…」
騎士団長が低く呟くと、騎士たちも身構えた。
「隊列を崩すな!まずは守りを固めろ!」
騎士団長の指示に従い、騎士たちは盾を構えながらグルムヴァイトを取り囲もうとした。
しかし、その動きを見透かすかのように、グルムヴァイトは鋭い咆哮を上げた。音の波動が周囲の木々を揺らし、騎士たちの動きを一瞬止める。
「耳を塞いで!これは魔力の音波です!」
マリアが叫びながらセイラの手を引いた。
セイラは息を飲み、戦鎚を強く握り締めた。
「怖がっている暇なんてない…これが私の戦い!」
その時、グルムヴァイトが鋭い爪を振り下ろし、騎士たちの盾を砕く。騎士たちは一斉に後退を余儀なくされた。
「セイラ様!」
マリアが叫ぶと、セイラは一歩前に出た。
「みんなの盾になる!」
彼女は力を込め、戦鎚を大地に叩きつけた。衝撃で地面が揺れ、グルムヴァイトの動きが一瞬止まる。
その隙を逃さず、騎士たちは剣を振りかざしたが、魔物の硬い毛皮には届かなかった。
「これじゃダメだ…!」
セイラは汗を拭い、再び戦鎚を振り上げた。
「次は私の全力を見せてやる!」
彼女の体が淡い光に包まれ、クリスタルの髪飾りが輝きを増した。
それはまるで彼女の決意を後押しするようだった。
今更ですがキャラデザ的なものを考えました。
セイラ
・左から右にかけて斜めになっている
・赤の瞳
・茶髪
・ハーフアップ(戦闘時編み込みしたポニーテール)
・胡蝶蘭 セイラ と調べていただいたら分かると思うのですが、それをイメージした形をしていて普段は透明。
長々としたあとがきを読んでいただきありがとうございます。評価、ブックマーク追加してくださると励みになります♪今後とも宜しくお願いします〜!