踏み出す一歩
重い扉の向こうから、黒いマントをまとった使者が一歩一歩慎重に歩み出した。
その瞳は真剣そのもので、口元には一切の感情がなかった。
「聖女様、エリシア王国より緊急の使者が参りました」
彼の声は冷静で、だがどこか焦燥を含んでいた。
セイラは戦鎚をしっかり握り締め、ゆっくりと使者の方を見た。
「何の用でしょうか?」
使者は一礼し、手に持った封印のついた書簡を差し出した。
「王国からの正式な要請です。深淵の魔物が国境近くの村を襲い、多くの被害が出ております。聖女様のお力を貸していただきたく存じます」
その言葉に、部屋の空気が一気に重くなった。
マリアがセイラの隣で小さく息を飲む。
「これが…最初の戦いになるのですね」
セリオンは冷たい目をさらに鋭くし、口元を引き結んだ。
「始まったな。これから本当の試練が」
セイラは深呼吸し、戦鎚を掲げた。
「わかりました。私が必ず守ります」
彼女の声は震えていたが、確かな決意が込められていた。
その瞬間、静かな訓練場に新たな戦いの鐘が鳴り響いた。
薄明かりの中、セイラは装備を整えながら自分の手を見つめていた。
「これが、私の戦う手…」
マリアが静かに近づき、声をかける。
「焦らないでください、セイラ様。あなたはもう聖女としての力を持っています。あとは自信を持つだけ」
セリオンは黙って武器庫の隅で、戦鎚の状態を厳しく点検していた。
「甘い考えは捨てろ。戦場は甘くない」
セイラは少し眉をひそめながらも、静かに答えた。
「わかってる。でも…怖いの、正直」
マリアは優しく微笑み、セイラの肩に手を置いた。
「怖さを知ることも強さの一つよ。だからこそ、一歩ずつ進みましょう」
そして、王国の護衛騎士たちが次々と集まってくる中、準備は整い始めた。
「さあ、出発だ」
セリオンの声が響き、重い扉が開かれた。
セイラは大きく息を吸い込み、戦鎚を握り締めた。
「私、必ず村を守る」
冷たい風が吹き抜ける廊下を、彼女は一歩一歩踏みしめていった。
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廊下を進むセイラの隣で、マリアは力強く言った。
「セイラ様、私があなたの盾になります。一緒に戦いましょう」
セイラはマリアの言葉に胸が熱くなり、頷いた。
「ありがとう、マリア。あなたがいてくれるなら、私も怖くない」
一方、セリオンは少し離れた場所から冷静に二人を見つめていた。
「私は戦場には行かぬ。お前たちが立ち向かう試練を見届けるだけだ」
その言葉には厳しさと深い覚悟が込められていた。
三人はそれぞれの役割を胸に秘め、王国の門をくぐり抜ける。
遠くに聞こえる戦の気配に、緊張が走るが、セイラは戦鎚を握り締めて踏み出した。
「マリア、一緒に戦おう」
「ええ、セイラ様」
彼女たちの絆は、これから訪れる激しい戦いを乗り越えるための唯一の光となるのだった。
少しずつ打ち解けてきたセイラとマリア。これから始まる戦いは如何に…!
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