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陰謀Ⅰ

「ダンナ、すまねぇ」


 デステールの前に傅くセリバ。


「……なぜ、尻尾をもっと使わない?」

「え?」

「尻尾の攻撃は当たってただろう。気付かなかったのか?」

「……」


 デステールは終始、セリバの方を向かずに続ける。


「ラムディアはお前の見えている部分から攻撃を見切っていたのだ。それに対しお前はただ自分の攻撃を押し付けるだけ。そもそも今の小競り合いを始めたのもお前のエゴの押し付けだろう?小さな気付きの差だが、これが四天王あいつとお前の認識の差。それが戦場だと生死を分ける。」

「……そう、ですね。」


 セリバは、歯を食いしばりながら言葉を絞り出した。


「僕の地位が欲しいのなら、その程度じゃ挑戦権にもならないよ。まあ、しっかり考え直しておきなよ。」


 もう行け、と促されセリバはデステールの後ろに下がる。その拳は、屈辱と怒りに打ち震えていた。



「それでは改めて、本日は急な招集に応じて集まっていただき誠にありがとうございます。ああ、『女王蜂』殿のご体調は予めお伺いしておりますので大丈夫ですよ、カトレア殿も遠路はるばる、ご苦労様です。」

「いえ、こちらこそうちの者が緊急時に動けなく、申し訳ございません。」

「よい、御老公には働きすぎるなと伝えておけ。デステールは早く本題に入れ。幹部をほぼ全員動かした緊急会議なのだ、下らぬ報告なら覚悟しておけ。」

「陛下、では早速ですが……。私の個人的な王都潜入の成果をば。」


 デステールが配った資料には、王都の守備兵の概数と配置、各門の責任者の名前及び能力、城壁の耐久力及び破壊工作の詳細、将兵の訓練の練度といった情報が詳細に書かれていた。


「これは……」

(ここまでの情報が集まっていたとは……だが、これがあってなお敗走を強いられたとは、一体何が起きたっていうの?)

「少々アクシデントがあり、情報はここまでしか集まりませんでしたが、まあ……滅ぼすのにこれ以上は蛇足でしょう。いかがでしょうか、陛下。」

「素晴らしい!デステール、お前が敗走したと聞いたときは肝を冷やしたが……、この成果に余は満足しているぞ!ここまでの情報が集まったのならば、我々の悲願も最早目と鼻の先であろう。今すぐにでもフォーゲルシュタットに攻め入るべきだと思うが、いかがか?」

「私は反対です、陛下。」


 鴟鴞爵しきょうしゃく・フラーヴが立ち上がり、意見する。


「確かにこちらの情報はこの戦いにおいて非常に有力でございます。しかし、デステール殿がアクシデントといえど撤退を余儀なくされたのも事実。今その原因が明らかになっていない以上、デステール殿に軍を任せるのは反対でございます。」


 フラーヴはデステールを見下ろしながら上奏した。


(ちっ、流石にこいつにはバレるよなぁ。僕の落ち度を探すのに毎回必死なんだから。)

「確かに。デステール、敗走の原因も報告できるか?」

「……人間側の隠し玉に少しやられまして。人間の女王に200歳超えてる娘がいるのはご存知でしょうか。」

「ああ、余も聞いたことがあるが……そいつか?」

「ええ。戦闘力は大したことはないですが、妙な催眠のような能力を持っていまして、体の自由を奪われてしまいやむを得ず撤退しました。」

「体の自由を奪う催眠か……。デステール、お前の能力に通じるような気がするが。」

「……いえ、そのようなことは有り得ないかと。私の催眠能力は種族由来のもの、()()()()でセイレーン族は私以外滅んだはずですので、別物と考えた方がよろしいかと。」

「そうか。しかし、そのような者が出てくるとなると考えものじゃのう。事前に手を打ちたいものだが……。」

「その役、我々蜂の兵にお任せいただきたい。我々ならば、兵の数で圧倒できると思います。王都はもともと我々の侵攻範囲、地理条件も知り尽くしております。」


 カトレアが沈黙を破る。


「なるほど……良いか?フラーヴ、デステール。」

「女王蜂殿なら、何も心配することはないかと。」

「私はもとより、敗将に弁はございませぬ。」

「よし、カトレア!帰って女王蜂に伝えよ!蜂の兵を用いて、人族の隠し玉とやらを抹殺せよとな!」


 こうして、会議はお開きとなった。



「ダンナ、これで良かったのですかい?」


 会議が終わり、魔王城から自領地に戻る途中、セリバはデステールに尋ねる。


「あのまま蜂のヤツらに手柄を渡してしまって……。それに、ダンナが王都に潜入してたのはアイツらのためじゃなくて……」

「セリバ、それ以上はだめだよ。どこで誰が聞いているか分からないだろう?」

「っ……!」

「そうだね……。じゃあ君に、一つ仕事を与えるよ。」


 デステールはセリバに耳打ちする。その内容に……セリバは腰を抜かした。


「セリバ、君にしかできないことなんだよ。じゃあ、よろしくね。」


 デステールはそう言い残し、セリバを置いて帰って行った。

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