魔族は見た目が9.5割
人と魔族が争うこの世界、人間に女王がいて王都があるように、魔族も国家を作り魔王と都市が存在していた。
魔族の王都――魔都ジューデス、魔王城にて。二人の魔族が会話している。
「ベイル、聞いたか?人族の抵抗がますます激しくなっているらしいぜ。」
「全くだ、ブルー。四天王はじめ幹部連中がなんとか押さえ込んでるらしいがね。」
「ああ、だがな、どうやら今は緊急会議が招集されてな。前線の四天王が帰ってきているらしい。」
「おいおい!一大事じゃないか!戦時中だってのに一体誰がどんな目的でそんなことを……」
「それがだな、王都に潜伏し活動していたデステール様が敗走し、デステール様自身が会議を招集したらしいんだ。」
「デステール様が敗走!?人間相手に?流石にそれは嘘じゃないのブルー……。」
「ベイル、俺がお前に嘘をついたことがあるか?」
「ありまくりだろうブルー。ありもしない噂話ばっかりで、本当だったことの方が少ないわよ、日刊ブルーさん。」
「いや、今回ばかりは本当さ。さっき歩いていたデステール様を見たんだからよ。すげえ深刻な顔してたぜ……。」
「それを先に言いなさいよ!全く、アタシも見てみたかったのよ!デステール様。」
世間話を続ける二人の前に、一人の女剣士が通る。
「失礼する。この先の会議所に用があるんだが、通らせてもらえぬか?」
小さな身体に細身の剣を2本提げた女剣士はそう尋ねる。澄んだ赤い瞳と頭から生えた2本の耳が印象的である。
(なんだ?兎の魔族なんて聞いたことないぞ?)
華奢なその身体は、3mを超えようかという巨体のブルーと並んでいることも相まって、さらに小さく見える。
「あぁ?なんだチビ、わざわざ俺がどけなくてもそれくらい小さけりゃどんな隙間でも通れるだろうよ。」
「ちょっとブルー!何言ってんのよ!!」
ベイルは慌ててブルーの口元を押さえ、恐る恐る女剣士を見る。だが女剣士は事も無げに
「なるほど、それもそうだ。会話の邪魔をして悪かったな!」
と隙間を通り抜けるように去っていった。
「おいベイル、何すんだよお前!」
「馬鹿ブルー!今の、四天王だよ!四天王!なんで喧嘩売るような真似するんだよ!」
「あぁ!?今のが四天王ぅ?んなわけあるもんか!ちょっと見てやがれ!」
そう言うとブルーはたちまちのうちに足元の小石を拾い上げ、女剣士に投げつけた。だが、その小石は彼女に当たることなく、細切れの砂の塊となって彼女の足元に落ちた。ブルーとベイルには太刀筋はおろか、彼女がこちらを向いたかどうかすらも見えてはいなかった。
「は……え??」
「戦乙女ラムディア・ストームヴェルン。まだ100歳ちょっとなのに数多の軍功を挙げて最年少四天王になった子だよ。あんた、ゴシップ屋のクセに知らなかったの?」
「ひょええ……」
「全く、腰抜かしちゃって。大の男がみっともないねぇ!」
ブルーとベイルの世間話はまだまだ続く……。